第22話
姿の見えなくなったノルンを探しているとラナが何かに気付いたように、出てきた家の裏口へ向かって行った。
ラナが裏口に辿りつく前にノルンが裏口からひょっこり出てきた。
その顔はやり切ったという感じで物凄いドヤ顔だった。
その横を通ってラナは家を覗き込んで、うわぁという顔をしていた。
「ん?なにかあったのかな?」
「あー多分ノルンのいたずらだな」
バルと二人でラナの方に歩いていく
「ショー…それって刀みたいに使用者権限みたいなの付けれる?」
「さぁどうだろう?たぶん出来ると思うよ」
「じゃあ付けといた方がいいよ・・・」
ラナが家の中を指差しながら言う。
何事かと思って家の中を覗くと理解出来た。
「あぁそういうことね・・・」
「ノルンそれを渡しなさい」
ノルンから鞄を取り上げるとラナはノルンにデコピンをいれた。
「いたーい!」
「当たり前でしょ!」
家の中はとても綺麗になっていた。
家具一つ残らず・・・
家具を一通り戻すとまた四人で一息つくことにしてお茶を淹れた。
ノルンはラナのお説教でシューンとしている。
不用意に渡したのは自分だし、他の人じゃなくノルンに渡したことでどうなるか分かったので、勉強になったということで、ラナもお説教をやめて落ち着いてくれた。
ノルンは普通なら絶対に入らない物が入っていくので楽しくなってしまったとのことだった。
バルも家から持ち出した鞄は、ノルンに渡す事はなかったらしい。
「でもその鞄って税金とか凄い事になると思うぞ?店で使ってる鞄もそれなりにかかってるからな」
「いや、それ以前にその技術を取り入れようと国が動くくらいになるんじゃない?」
「自分はただ気楽に世界を旅したいだけだから国から目をつけられるとかは勘弁してほしいな。技術を開示しろっていわれたら無償で世界中に広げるよ」
「でも検査とかですぐに分かるんじゃない?」
「その点は大丈夫らしいんだよね。それにこれで商売とかする気もないし。あ、でも木を運ぶのに使おうと思ってたから商売になるのか?」
「あぁ薪なら冬に備えて必要量が増えるから感謝されるぞ。税金も基本的にかけてないな。まぁ魔法鞄の貸出はないけど国から数量を確保する為に人員と護衛の募集が収穫が終わる前位に次の年の薪の分だけど出されてるんだ。特に数量の規定もないから取りすぎても文句はでないよ。うちも春に向けて道具の整備の為に生活用の他にいつも以上に仕入れてるな」
この世界だと伐採するにしても輸送するにしても護衛がいないと魔物に襲われる可能性がある為、そういう形になっているらしい。
ある程度は常時行っているがどうしても効率は悪いから手が空く人員が出てくる時期に稼ぎ口として国で主導してるとのことだ
薪の出来具合はバルにみてもらうことになった。
素人が見ても良し悪しなんて分からないし魔法でやるつもりなので加減も分からない。炭とかにしたらまた税金関係で大変な事になりそうだし設備もある程度は必要になるだろう。
「そういえば街の中歩いてる時に聞いたんだけど、昨日買い物してる間になのましんさん?に、この家でなにかして貰ってた?」
「あぁ補修と補強して貰ってたけど、なにかあった?」
「なんか家全体がぼやーっとしてた時があったんだって、少ししたら元に戻ってたらしいけど」
「ぼやーっと?」
(なにか心当たりあるか?)
『恐らく家のバランスを取る為に外壁全体に広がった時に目撃されたと推測されます』
「傾いた家を直すのに広がったみたい」
「そんな事も出来るんだ!すごいね!」
それでいいのか?とちょっと思ったがそのくらいでいてくれた方がこちらも楽だ。
やること全部にツッコんでいたら身がもたない。
「あぁそうだ。この家に地下があるのって知ってる?」
「いや知らないな」
「地下室なんて珍しいね」
流石に住んでた訳では無いので知らないらしい。
「下になんかあったのか?」
「いやまだ見てないんだ」
「じゃあみんなで地下室探検だね」
「なんか面白いものあるかな?」
いつの間にかノルンは復活していたようだ。
「呼び方はネズミかな?がいたらしいけど全部いなくなったみたいだから特に危険はないと思うんだけど行ってみる?」
「掃除とか片づけもいらないみたいだから時間あまっちゃったし、みんなでいこ」
言うが早いか準備を始める。
前日に持ってきた荷物の中からランプを出すと包丁まで取り出して武器として持っていくらしかった。
どこの地下迷宮にいくのやら。
流石に鎧までは準備してないらしいが、よし!って感じになっている。
バルの方は補修の為に持って来てくれていたのか木材を器用に組み立てて盾のようにしていた。
ノルンはなんか思いついたのか外から石を拾って来ていた。
う、うん。未知の場所に行くんだから準備は必要だよね・・・
自分の危機感が薄すぎるのかと思いつつも刀と魔石をもって準備完了した。
「じゃあ、行こっか」
皆で寝室に向かう。
バルに手伝ってもらって完全にベッドを端に寄せると把手に手を掛けて開いた。
「そんなに黴臭くないね」
「なんか昨日色々やってくれたみたいだからね」
「そういえば魔石って魔力入れて投げると光ったまま転がったりする?」
「あ、それはやめたほうがいいかも大体が割れるけど属性によっては破裂するのもあるんだって。しっかりした鑑定してない魔石ではやらない方がいいかな」
あんまり役に立つ特技ではないので率先して覚える人は少ないらしいが、出来ない事ではないらしい。
自分の魔力の属性の制御や魔石の属性に合わせて制御しないと干渉が起こってしまうが、
簡単に光らせる程度の魔力ならば大体同じ反応をして安定している
衝撃などでバランスが崩れた時には個人の魔力、魔石の属性によって反応が変わるものだという。
謎物質だな。マッドナノならなんとかしそうだがやめといた。
「ラナは奥見える?」
「ちょっと光が足りないかな。ノルンならもうちょっと見えてるかも」
「階段の一番下までー」
「危険はないと思うけどゆっくりいこうか」
ランプに入れた魔石に明かりを灯してラナを先頭にして降りていった。
ランプはバルが持ってラナの手が空くようにし、そしてバルの後ろにノルンその後ろに自分という並びで降りて行った。
降りると右側に扉があり、その先が部屋になっているようだった。
ラナが中の様子を確認してから皆で中に入っていく。
ノルンの尻尾が入った瞬間にぼわっと膨らんだ。
前を見てみるとラナの尻尾もいつも以上に膨らんでいた。
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