第21話
扉だな。うん扉だ。
それは映画とかに出てきそうな、床にぴったりと合わせて作られたものだった。でも借りる時の話だと地下があるなんて聞いてないなと思いつつ、把手に手を伸ばして止まる。
(繁殖していた生物ってなんだ??)
この世界にいる生物の生態系なんて、把握している訳もないし、もし隠れてなにかの研究をしていたとかだったらヤバいものがいるのではないかと思案していると
『基本的には地球でネズミと呼ばれていたものが類似しています。多少の身体能力の上昇はありましたが恐らく体内に内包されていた、魔石によるものかと思われます』
(それは今いないんだよな?)
『はい。家の修復過程でその生物による家屋への被害が認められましたので排除しました。下水の方に繋がる場所の先には粘液性の生物も確認しましたが、そちらは廃棄物などの除去をしているだけのようなのでそのままにしてあります。』
さらっと怖いこと言ってくれるな。修復頼んだら修復の邪魔になりそうなのを排除とか…。しかもスライムみたいなのもいるらしい。廃棄物の除去ってことは下水用に制御出来ている魔物って事なのかな?まぁ後でちょっと聞いてみよう。一応安全な事を確認し終えると把手を持って扉を持ち上げてみる。
そこには地下に向かう階段があり、階段の途中の壁には魔石を入れて使う為なのか、小さなくぼみが等間隔で並んでいた。当たり前だが下の方は暗くなにも見えなかった。仕方ないので一旦扉を閉めて、ラナが持ってきた荷物にランプがあったのを覚えていたので、ランプを取りに行くことにした。その時外から声が聞こえてきた。
「ショー!みんな連れてきたよー」
「手伝いにきたよー」
ラナがノルンとバルを連れて到着したようだった。
寝室をあとにして玄関に顔を出す。
「わざわざ来てくれてありがとう。でもあんまりやる事ないかも」
「ほんとだ。なんか綺麗になってるね。」
「なんか・・・変?」
「あれ?この家ってこんなにしっかりしてたっけ?もっとボロい感じだったはずだけど」
さすがに皆違和感を感じてるようだった。まぁ何十年も放置してあった家が傷まないはずはないのだから。まぁこの三人にはある程度説明して置いてもいいかと思い何が起こったかを常識の範囲内で話すことにした。何が常識とかいう反論は無しとして。
「えっと…まずは家の中で話を聞いてもらう事からかな」
取り敢えず前の家の持ち主が置いていった机と椅子に座ってもらう。
「なにから話せばいいんだか自分でもわからないんだけど…体内にナノマシンという機械が入っているんだ」
「なのましん?」
「きかい?」
「まぁそういう反応になるよね。んー簡単にいうと目に見えない位小さい生き物かな?」
「それに取り憑かれてるってこと?」
ノルンがサササっと距離を取ろうとするのをバルが止める。
確かにその気持ちは分かる。
「といってもそれに支配されてるとかじゃないんだろ?」
「あぁそこは全く大丈夫、一応支配下にいる」
(大丈夫だよな?知らないうちに支配されてるってことないよな?)
ちょっと疑ってしまったら返答がきた
『サポートを目的として存在してますので、自由を害する事は絶対にありません。例外があるとすれば生命活動に影響が出て、命令を出来ない時はある程度の判断をする場合もあります』
まぁやってることは常識を外れてしまってるが、害になるような事はないんだよな。常識ってなんだろう…
「それのおかげで自分は元の住んでいた場所と全く違う環境のこの場所で生活出来てるんだ」
そこからはラナ達に会った時の事、ぞの前の事を話していった。
「なんか物語みたいな話だねー」
「自分にとっては今が現実なんだけどね」
「夢?」
「だったらいいのか、悪いのかも今はわかんないよ。夢ならもっと楽させて欲しいよ」
「現実的な話じゃないからこっちも実感出来ないな」
「じゃあ現実感のあるものを見てもらうしかないんだけど、この世界だとかなり現実感の無いものかもしれないかな」
皆に裏口から外に出て貰って魔法鞄を出す。
「あ、それが買い物の時の疑問と繋がってくるのね」
「これが一番分かりやすいのかなと思ってさ」
「魔法鞄だよな?見た目も特に変なとこもなさそうだけど?」
先ずはラナに渡して、皆に見てもらう。それぞれが持っているものと見比べたりしてるが、全員で首を傾げている。それを返して貰うと自分も含めて横一列に並んで貰った。
「特に変わったとこもなかったけどなにが起こるんだ?」
「買い物に行った時にやたらと物が入ったんだよね」
「容量が違うの?」
「容量が違うのなら親父のみたいに大きさも違うはずだし、確か容量を増やせば増やすほど、複雑な術式になるから小型には出来ないって聞いたな」
「まぁ中身全部出すから見て貰おうと思ってね」
そう言いながら前日に買った物からを出していく。藁、布、魔石、食べ物、刀、この世界に飛ばされた時の荷物、森に行った時に採取した薬草、果物や果実、薪を作る練習の為に持って帰ってきた生木。
皆、刀を出すあたりからポカーンとなっていた。そして時間が経っているはずの薬草を出すあたりから再起動始めていた。
「それって数日前に行った時に採取した薬草?」
「そうそう。自分の手でなにかに出来るかなと思ってとっといたやつ」
「この果実は同じ時に取ったのか?」
「そうだね。教えて貰った食べれるのを歩きながら採取したもの」
「この木、まだ切ったばっかりの匂いするよ」
「薪作るのに良い感じのを切っていれてたんだ」
皆は早々に自分の持ってるカバンがおかしい事に気付き始めたようだ。
「という事は容量も凄いけど、時間経過もしてないってことなのかな?」
「そういう事になるね」
「非常識なもん持ってるな」
「やっぱりそういう事になるよね」
「もっかいみせてー」
出したものを回収してノルンに渡す。
「じゃあ猪の時のあれは?」
バルに言われて思い出したので、ノルンが眺めている鞄から刀を引っ張り出す。
「これの周りのナノマシンで切れ味を増しているんだ」
「そんな事にも使えるのか。出回ったら武器屋とか要らなくなりそうだな」
「まぁそんなに単純に作れる物じゃないから大丈夫だよ。あとこれは自分じゃない人が使うことは出来ないんだ」
「それもなのましんの機能なんだな」
「あれ?ノルンは?」
バルと話してるといつの間にかノルンがいなくなっていた。それに気付いたラナがキョロキョロと周りを探していた。
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