第20話

 市場のお店にも藁を扱っているお店もあるが家具の為に加工してたり、不純物などを取る為に人件費がかかっている為、農家の人から直接買った方が安いとの事だった。


 いつも出ていた門とは別の方向の門からでると、かなり広い範囲で畑が広がっていた。今日の作業は既に終わっているのか、座って談笑している人達がいた。ラナはその人達に声を掛けた。


「すみませーん。少し藁を譲って貰いたいんですけど?」

「お嬢ちゃん。今の季節だとあんまり品質のいいのはないぞ?」

「品質は良くなくても問題ないです。一人用の寝床作る位の分量があれば」


「去年の売れ残りが少し残ってたな?」

「でもあれはあんまり状態がよくないぞ?」

「まぁみてもらって決めてもらえばいいだろう」


責任者っぽい人についていくとそれなりの量が保管されている場所に連れて行ってもらった。


「今あるのはこれで全部だな。適当に見繕って持って行ってもらっていいぞ」

「じゃあちょっと時間をもらって分量きめますね」

「俺たちは仕事が終わって喋ってるだけだから終わったら声を掛けてくれ」


その人はそれだけ言い残すと他の人がいるとこへ戻っていった。


「それじゃいい感じのとこを探して集めよっか」

「といわれても藁の良し悪しなんてわからないんだが?」

「寝てる時に突き刺さらなければいいのです!」


 ラナの良し悪しの基準も物凄く曖昧だった・・・

取り敢えず積み上げられたものからなんとなくで選んで適当にまとめていく。

自分基準で固すぎず柔らか過ぎず、状態のマシなものを選んでいく。

二人でバサバサと藁をかきわけながらそれなりの分量になった所でおじさんに声を掛ける事にする。


「これくらいあればだいじょうぶでしょ。おじさーん!」

「選び終わったか、それなりの量だな。荷車は用意してあるのか?」

「あ、鞄に多分入ると思います」


おじさんに提示された金額は確かに安いものだった。

それを払うと早速、鞄に詰め始める。

なぜかラナの視線がじっと鞄を見ているような気がしたが普通に収納していた。

選別した分を全て収納し終えて二人でお礼を言うとそのまま家に向かった。


 帰り道でラナはなにか考えてるような感じだったので、声は掛けずにそのまま歩いていた。


「ショー」

「ん?」

「その鞄って、確か一般用の申請で購入したやつだったよね?」

「え?そうだけど。なにか問題があるの?」


 問い掛けに答えた瞬間に思い出した。この世界で一般的に手に入る魔法鞄はそこまで容量が多くない。そして今日買い物で買った物は全てこの中に入ってしまっている。

 

 ラナがジトーっと目を覗き込んでくる。スゥっと目を逸らしてみたが、逸らした先にラナがついてくる。それを何度か繰り返してみたが終わらなかった。


「帰ったら自分の分かる範囲で説明します・・・」

「よろしい!」


 取り敢えずは説明を聞いてからという事にしたらしい。


「そういえば今日のご飯はどうするの?」

「出来たものを買って帰るか、その辺で適当に食べようと思ってるよ」

「じゃあうちで食べる事、決定だね」

「え?」

「お母さんにも言ってあるから用意してあるよ」


既にラナの家で夕食を食べる事が決定していたらしい。


「鞄の話は明日皆と一緒に話してもいいかな?」

「りょーかい」

「じゃあ明日はショーの家で集合だね」


その日はラナの家でいつもの様に過ごす事になった。

リオデールさんにも家を借りた事を話すとやはりあの場所は知っている様だった。


「家が壊れてたりしたらラナのせいにしていいからな」

「もーお父さん!」


小さい頃に走り回っていたことは知られているらしい。


「まぁ、何かあればすぐ来れる場所だし、丁度いいかもしれないな」


その日は、今まで通りラナの家に泊まる事となった。


翌朝、朝の訓練をしてから荷物をまとめていると部屋までラナがやってきた。


「先に出てノルンとバルに声掛けて来るね」


それだけて伝えるとパッと出掛けていった。

荷物を持ってエルナさんの所へ挨拶に行くと


「いつでもご飯食べに来なさい。どうせご近所さんなんだから」

「じゃあ食べ物なくなったら駆け込んできます」

「はいはい、体に気を付けてね。あ、あとこれ持って行きなさい。終わったらあの子に渡せばいいから。どうせ昨日の買い物で買ってないでしょ」


と言われて、すっかり忘れていた掃除道具を渡された。

あっ、という顔をするとニコリと笑われてしまった。


荷物と一緒に掃除道具を持って、家を出た。


軽く体を伸ばしながら今日片付ける事をまとめていく。

頭の中でやるべき事を考えているとあっという間に着いてしまった。


そういえば外からはじっくりと見ていなかったと思い出して、玄関付近に荷物を降ろして外側から家全体を見てみる。

一応中に入った時に雨漏れの跡は見当たらなかったので軽く眺める程度だ。

グルリと外周を回って異常がないことを確認した後に家に入った。


入る時に微妙な違和感を感じて思い出した。


(補修と補強とやらは終わったのか?)

『はい。終わってます。項目を確認しますか?』

(いや、いいよ)


入った時の違和感はコイツのせいだった。

やけに扉の開閉が滑らかだつたのだ。荷物を運び入れて更におかしなことに気付く。


(さっき言った項目っていうの確認してもいいか?)

『家全体の補修及び補強、錆に類似した物の除去、傾きの修正、作業に伴う微生物の除去、地下格納庫に繁殖していた生物の除去、ここまでが終了しています。快適な住居への提案への項目かありますが、確認しますか?』

(ん?んんんんん?)


この子は一体、一日かけてなにをやっていたんだ?そして地下なんて聞いてないぞ?


(とりあえず地下の場所を教えてくれるか?)

『入り口は一階寝室の寝台の下に床材と同じ物で扉が作られています。』


それを聞くと早速、寝室に向かった。

ベッドは動かした跡はなかったが別に大きな物を運び込んだりしてないから当たり前かと思い、木で出来たベッドをずらした。

その下には確かに簡易的な持ち手のついた扉のような物があった。

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