第17話
家を探す為に早速出掛けた。
「そういえば希望とかあるの?」
「取り敢えずは作業が出来る場所と出来た保管する場所がある所かな?」
「出来た物?」
「基本的には薪かな?あとはなにか出来ることがあればやるかも知れない程度」
「あー冬に向けて需要が増えてくからか」
「準備に時間がかかり過ぎなければ冬前には出れるだろうからね」
「ん?今年用の薪になると魔法でやらないと多分間に合わないよ?」
さすがにその辺はわかっているようだ。
「あー、一応練習はしてるよ。どのくらいの数量が出来るかはわからないけど」
ちょっと苦しい言い訳かなと思いつつも返す。
「そっかショーは使おうと思えば練習でなんとかなるんだもんね」
ちょっとムーっとしていたのは気のせいか?
「あ、あそこだ」
一軒のお店に入っていく。
「ペナクさーん、いますかー」
「ん?ラナちゃんかどうした?」
店に入って行くと50過ぎ位の男性が書類から目を上げて答えた。
「おーほんとにいた!ただの遊びにくる近所のおじさんだと思ってた!」
「そんな風に見られていたのか」
ペナクさんは苦笑いしながら答えた。
「だって不動産屋さんの店主が個人の家を回ってるなんて思わないじゃない?」
「小さい店だからな。それに自分が仲介した物件に不備がないかの点検も必要な仕事なんだよ。家の事でなにかあったのかい?」
チラッとだけこっちを見ながらペナクさんが続けた。
「それともラナちゃんが結婚して新居が必要になったとか?」
「ち、ちがいます!」
慌ててラナが否定する。全力否定だった・・・
「この人が作業する場所を探しててそれで来たんです」
「見たことない顔だけどどっかからの移民さんかい?」
「森で迷子になっててうちで預かってたんです。」
ラナはこれまでの経緯をかいつまんで話した。
「なるほどね。大変だったね。一応身分の確認取れるものはあるかな?」
ラナは、あっ!て顔をしてたが、荷物からギルドで作ったカードを出す。
「うん。大丈夫だね。細かい手続きは物件が決まってからでもこっちで出来るから任せてくれればいいよ。そしてラナちゃんはなにも考えずに連れて来たんだね。」
「だ、だって身分を証明するものが必要とかしらなかったんだもん」
「まぁこの街にずっと住んでるとそんな事は考えないか。勉強になったって事だ。逆にこのお兄さんのほうがしっかりしてたな」
ラナは頬を膨らませてジトーっとペナクさんを睨んでいた。
「まぁまぁそんなに怒らないで。取り敢えずそこに座って座って、それでお兄さんはどんな物件を探しているんだい?」
椅子に誘導されながら答える。
「寝る所はなんでもいいんですけど、物を置く所が少しある場所を探してるんです」
「んーと、確かそれに該当しそうな場所があったような?」
ペナクさんは棚の方に行くと物件の情報が纏めてある書類を漁り始める。
そして数枚の資料をこちらに持って来た。
「これは今の規格で立てられているから少し高いけど庭も大きめだね。で、これがちょっと古いけどお手頃価格で庭はそれなり。こっちは区画整理の際に後回しになってるから敷地自体は広いけど家はかなり古い、まぁちょっと手直しすれば寝る分には大丈夫かな。一人だとちょっと広いかもしれないけど。」
そういって何枚かの資料を見せられた。なんとなくは分かっていたけど全く物件の様子は想像出来なかった。
「これって直接見せて貰う事って出来ます?」
「あぁ大丈夫だよ。じゃあちょっと準備してくるから待っててね。」
そう言ってペナクさんは奥に行き出掛ける準備をして戻ってきた。
促されてそのまま物件まで向かった。
一件目は他にも建っている建物とほぼ同じ外観だった。
中に入ってみると、とても綺麗で新築という感じだった。
「これは一番新しい規格で建てられた物で家具、魔石などは賃貸料に含まれた形で消耗した魔石は逐次交換されます。そして庭のほうなのですが、」
そう言いながらペナクさんは裏口の方の扉を開ける。
「だいたい建物と同じ位の敷地になりますね。」
これは流石に値段が高いだろうなというのが顔に出てたのだろうかペナクさんが声をかけてくる。
「では次の物件にいきましょうか。」
二件目の物件はラナの家に似ていた。間取りは少し違う様だが一通りの物は揃っていた。
「こちらは先程の物件の前に区画整理した時に建てられたものになりますね。その為、家具、魔石などは賃借人持ちとなりますので家賃は低めになります。庭の方なんですが、この通り建物に対して半分程になります。」
庭に出てみると確かにリオデールさんに稽古をつけて貰っているより気持ち狭いかなという広さの物だった。
「では三件目へいきましょうか」
三人で次の物件へ向かう。ぼーっと歩いてるとラナが声を上げる。
「あれ?ここってうちの近く?」
「そうですよ。物件自体はもう少しいったところですが」
「うちの近くの広い敷地って・・・」
なにかに気付いたのかラナが考えだす。
ペナクさんはそのまま歩いていく。自分も少し見慣れた感じのする場所を通っているのに気付いた。そして知っている道から少しそれて外壁の方へ向かって行った。
そして小道の方に入っていって二階建てのいかにも木造という感じの家が見え始める。
それを見てラナは、あちゃーという感じで額に手を当てて俯いていた。
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