第16話

 リオデールさんに話をしてから一週間程。

あれから少しずつ旅をする際の注意点など実際の体験談を聞きながら訓練もしてもらっている。最初はズタボロになって手も足もでなかった。当たり前だ。ただ予定外のラナの旅立ちもあるのでマッドナノ(体内のナノマシン)も使わざるえなかった。適宜、最適化を行ってもらいながらも、変な魔改造されないようにだが。


 それとギルドで行われている講習会にもなるべく参加している。基本的な部分がマニュアルとなっているので、それを無料で受けれる部分は受けている。有料の部分はもう少し金銭面の準備に余裕が出来たら出来れば受けようと思っている。


(地球で読んだチートものの転移小説と同じならもっといいイベント続きなんだろな)

『小説のような展開にする事も可能です』

(いや、呼んでないし命に関わることじゃないんだが・・・)

『身体の最適化の話の案を提示しました』


 こいつ絶対に楽しそうだから出てきただけだろう・・・

しかも展開って事は俺tueeeeモードとかハーレムルートにする気だ。そんなのに任せたら構築した謎ネットワークを駆使してある事ない事でっち上げてチートなデバックモードになってしまう・・・。そんな事は望んでないというのに。


 とりあえず無視して今後の事を考える。確かにマッドナノを本格的に使えば、小説的なノリでイベントを起こしまくってウハウハな生活も可能だろう。しかしそれは最終手段でも使いたくはなかった。


(でも金の確保となると森に入って大量の獲物をとって稼ぐくらいしか思いつかないし、やりすぎれば輸送の手段もないからキツイな・・・)

『先日入手した魔法鞄は付与されていた魔法の解析が終わっているので容量をほぼ無制限にしてあります。それとテスト段階で不完全な時間遅延の部分は構築し直して内部での時間経過が行われないようになりました。それに伴い、出し入れの記録や税金の計算に使われる部分を書き換え現状の検査魔道具では感知できないようにしてあります』

(おまっ・・・)


 数日前に申請して手に入れた魔法鞄は、知らない内に既に魔改造されていたらしい。それってバレたらヤバいんだが・・・もう少ししっかりと見張ってないとコイツは自重してくれないことがよーくわかった。このまま放っておくとただの布の服を安全の為にって事で、この世界の物質では切れないありえない装備とかも生み出しそうだ。


 確かに役に立つものではあるが使い方を間違えたらダメなものを手に入れてしまったようだ。必須になってくるだろうから反論も元に戻してくれとも言えない立場ではあるが、なんかそういう弱い部分を突かれたようで納得がいかなかった。


(それでこれを使ってなにかしろと?)

『今現在の収入状況ですと、万全な状態を作って旅にでるとすると二年程かかります。』

(まぁそうなんだよな。色々足りなさ過ぎてどうしようもない)


痛い所を突かれて反論も出来ないのがちょっと悔しかった。


(んで、なんか改善案でもあるのか?)

『人にバレにくく最短でいく案としては、一人で活動出来る場所へ引っ越し、怪しまれない程度の物を売り捌くのがいいかと思われます』


 確かに旅をする話をしてからはラナは大張り切りで、報酬の良い仕事をしてお金を貯めている。自分も薬草採取が片手間になり、狩猟の方がメインになりつつある。おかげで薬草を採取しているよりは稼げているのだ。


『この季節ですと肉などの保存食に加え、冬に備えて燃料となる材木があまり注目を集めず数量を販売できます。』

(いや、ちゃんとした知識はないが、薪ってそんなに簡単に作れるものではないだろ?)

『魔力のある者であれば短時間で作成が可能です。』

(といってもそんなの一人でやっていたら怪しまれるぞ?)

『人を雇ってギルドだけでなく複数の小売りも行う事をお勧めします。』

(雇うってのは前に言ってた国の機関からか?)

『はい。中には魔力が高い者もいるので薪の加工の手伝いにもなります。』


 なんだろうこの悪の組織のブレーンみたいなのは・・・確かに知能的には単なる人間よりは良いだろうけど、考える事が黒に近い上に逃げ道を確保している用意周到さ。


 まぁでも全面的に批判してても、しょうがない。早速動く事にする。

あまりにも連日狩りにでていたので、両親からお説教を受けてシュンとしているラナの所へ向かう。


「ラナ。ちょっとお願いしたい事があるんだけどいいかな?」

「暇だから大丈夫だよー」

「ちょっと家を借りてやりたい事が出来たんだ」

「部屋だけだと足りない?」

「んー多分場所が足りなくなると思うんだ。」

「じゃあ不動産屋さん行って相談してみよ!」


 言うが早いかラナはエルナさんの所に行って出掛ける事を伝えてきた。相当暇だったらしい。


「お母さんにこの家借りた時にお世話になった人のとこ教えて貰ってきたよー」

「ありがと」

「じゃあ早速いこー」


 自分の返事も待たずに既に玄関に向かっていた。慌てて部屋からお金の入っている袋と身分を証明するものを持って追いかけた。

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