第15話
夕食の席で早速先程考えたことを聞いて見ることにした。
案の定リオデールさんは大反対だった。
「旅は君が考えているほど楽なものじゃないぞ。そもそも自衛手段があったとしても寝込みを襲われれば、そんなもの役には立たない」
「それでも世界を見て回りたいんです。」
「資金の事はある程度、着いた場所で稼ぐ事が出来れば問題になる事はそこまでないが、そもそも一人でというのが無理な話なんだ。悪い事は言わないから、ここの街でもいいから同じ考えの人をギルドで探して地盤を固めてから出発するのが懸命だよ」
やはり一番の問題点はその部分になるらしい。いくら強力な力があったとしても一人で出来る事というのは限られてくる。どう足掻いたとしても一人では根本的な部分を解決することは出来ない。なのでマッドナノに教えてもらった方法も提示してみた。
「ギルドでも募集は掛けてみるつもりです」
「でも?」
「他にも国が行っている政策で難民や孤児、犯罪者の更生施設からも募集出来たらと思っているんです」
「あー。そういえばそういう施設もあったな。しかしそんな方法でうまくいくのか?」
「実際、わかりません。もし居れば故郷のある国の元々いた場所に戻るのを望んでいても自分みたいに一人で行くのが無理で留まっている可能性もあるので同行しないか提案してみるつもりです。他にも世界を見て回ってみたいという人もいると思うんです。」
リオデールさんは考えこんでしまった。
「貴方もそんな感じで旅に出たじゃない?しかも私を無理矢理巻き込んで。」
ラナのお母さんのエリナさんが口を挟んできた。
「いや…あれは…若気の至りというかなんというか………」
リオデールさんはもごもごとして反論は出来てなかった。
「えー!お父さんそんな理由で冒険者やってたの!?」
「いや、その、まぁ…そうだ」
「じゃあショーの考えにそこまで強固に反対出来ないじゃない!」
奥さんと娘になにも言えなくなってお父さんはたじたじだった。
やらかした。お父さんだけと話せば良かった・・・
お父さんは言われたい放題で放心しかけていた。
「いや、いますぐ出る訳じゃないですし、もう少しこの国の事とか世界情勢を調べてから出るつもりです。それにお世話になっているのにお返しもせずに出ていくような、恩知らずにもなりたくはなりたくないので自立して生活出来るようになってからです。」
「貴方よりもよっぽどしっかりしてるじゃない。あの時なんて半ば飛び出すように旅にでたわよね。」
「・・・」
助けられるかと思って言った言葉はお父さんに更に追い打ちを掛ける事になってしまったようだ。ラナはニヤニヤしながら言い返せずに俯いてしまった父親を観察している。尻尾は楽しそうにブンブン振られている。
「はぁ…分かったこれ以上はなんか墓穴を掘りそうだからなにも言わないよ。ただ教えられる事は教えさせてくれ。出会った以上、若い者がなんの力も持たせずに出てくのを、見送って不幸になるのは見たくない。」
「なにをかっこつけてるんだかこの人は…」
エリナさんは苦笑しながら言った。
「いやいや本心だからな!!」
リオデールさんは必死になって言っていた。
「あ、じゃあ私もショーに着いてく!」
「いいわよ。ちょうどいいから見識を広めて来なさい。」
「「え…」」
その言葉に自分とお父さん、二人で固まる。
「いやいやいや。ラナはこの街での生活基盤もあるし、そんな事する必要は全くないでしょ?」
「旅はそんな簡単に…」
リオデールさんはエリナさんの目線によってピタッと言葉を止める。
「さすが私の娘!今まで以上にショーの助けになってあげなさい。」
「はーい」
お父さんと目を合わせて申し訳ない気持ちいっぱいで頭を下げると首を振ってため息をつくリオデールさん。一度言い出したら絶対に聞かないので諦めるしかないといった感じだ。なんか更に申し訳ない気持ちになってしまった。
「それでショー。いつ出発するの?」
「いや準備をしっかりしてから出る予定だよ。準備終わるのが冬に近くになったら冬を過ぎてからになるから。」
「なーんだ。すぐにはでないのかー」
「さっき、ちゃんと言ったよ。」
ため息をつきながら突然の言葉に答える。リオデールさんは、ほっとしたような反対意見を言いたいような複雑な顔をしていた。
「じゃあギルドの仕事で旅のお金稼いでおく!」
「じゃあ私は旅の事をもう少し詳しくラナに教えとかないとね」
「うん。お願いしまーす。あ、バルに防具の整備道具とか武器の予備とかも頼んどかないと!」
この母娘、ノリノリである。
「すみません。自分がこんな事言い出したばっかりに。」
「まぁ気にするな。子供の意見なら尊重したいという気持ちも親の本心だ。それでなくてもいつもの二人と旅に出ると、いつか言い出すかもしれないという思いはあったよ。それが早くなっただけかもしれないからな。むしろちゃんとした考えを持ってる君がいる方がマシなのかもしれないと思うよ」
なんか考えていた事の斜め四五度に飛んでいってしまった感じもするが、同行者が知り合いだというのは、少し嬉しかった。
だが危険はあるのだから充分以上の準備をしとかないとと、気合を入れなおす。
後日、リオデールさんに自衛と共に護衛にもなる指導をお願いをした。
「娘さんを巻き込んでしまった以上、万全の準備で行きたいです。」
「厳しくするがいいか?娘が旅立つ事になったきっかけへの恨みで個人的な感情も上乗せされるかもしれないぞ?」
「勿論です。死なない程度までお願いします。」
正直な気持ちも乗せて言うリオデールさんに、ちょっと苦笑いしながら答える。
そして時間が空いている時に旅に出るときの必要な事を教えて貰えることになった。
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