第13話
ショーさんが来てから1ヶ月程。
猪に襲われた事件からは特に危険も無く、薬草採取も何度か行って、自分で生活費の足しを作れる事で多少落ち着いたのか勉強も捗っているようだ。
そして驚異的な勢いでたまに考え込むような感じにはなるものの、全く生活には支障がない程度に話せるようになっている。
「おはよー」
「おはよう」
「ご飯食べたら、ゆっくりしてから門までいこ。早い時間だと出入りが多いから。」
「はいよ。どう話したらいいんだろ?」
「んー。遠い国からがやっぱり一番混乱させずに普通の生活おくれると思うよ。この世界ではまだ大きな国以外にも沢山の未開拓の部分はあると思う。」
「やっぱりそれがいいか。」
話せるようになってから色々と話を聞くと、同じような世界のもっと技術の進んだ世界から、飛ばされたらしい。しかも今の時点では元の世界には戻れるような方法も無いし、元の世界も戦争で滅びかけているので、特に戻る気もないということだった。
なのでこの世界での生活を続けて色々な場所を見て歩くのが目標だと言っていた。
そして今日は、その為に門に行って、今まで喋れなかった為に説明出来なかった為に後回しになっていた部分を伝えるという事になっていた。
朝ご飯を食べて、準備をする。準備と言っても特に用意するのはないんだけれど。
「じゃあいこー。行ってきまーす」
「はーい。いってらっしゃーい」
二人で歩いて門へ向かう。
喋れるようになってから色々聞いたら二人とも同じ歳くらいだと思っていたらしい。西洋人?という人種?に似ていたことから20才くらいだと思われていたし、自分は16才くらいだと思っていたと言ったら東洋人?は見た目は若く見られることが多いとの事だった。お父さんとお母さんも同じだったらしく酷く驚いていた。
と言う訳で今更だから普通に同じ歳くらいの対応でお願いしたいといわれた。皆にも伝えてあり今では4人で行動する事も多いのでだいぶ馴染んでいた
「ショー!!いたー!!」
前からノルンが走って来た。
「あれ?なんか約束あったっけ?」
「ない!」
ドヤ顔で答えるノルン。呆れる二人。いつもの光景だ。
「どっかいくのー?」
「門までショーの話をしに行くとこだよ」
「じゃあ暇だから着いてくー」
言うが早いか私の尻尾で遊び始める。ほんとに暇だっただけみたい。
ノルンの相手は尻尾でしつつ、門に向かう。
「タルトさーん」
「どっか行くのか?」
「ショーさんが説明できるようになったので来ましたー」
「そうか。じゃあ詰所の方で聞くから先に行って、待っててくれ」
三人で詰所に入っていく。ノルンは部屋の中でフラフラーっとしている。
「ノルン、いたずらするんじゃないぞ!」
扉から書類を持ってタルトさんが入りながら声を掛けた。
ノルンはビクッとしてスススッと棚から離れて行く。
何かしようとしていたらしい。
「さてと、それじゃあ詳しい話をお願いするかな。」
書類を広げながら椅子に座り、タルトさんが話を進めていく。
「じゃあ、森に迷い込んだ所をラトルーナ達に発見されたということだな。それまでの記憶は曖昧と。他の国にはギルド関係の記録もなしか。それはこっちでも国の機関に再確認しとこう。曖昧なままだと気持ち悪いだろうからな。パーティーでの旅の途中の事故で記憶を無くしてる可能性もあるから同行者がいたなら何かしらの届けが出てる可能性はある。」
(ショーが言うには飛ばされた時は一人だったけど、技術の進んだ国ならもしかしたら前にも、この世界に来てる同じ境遇の人もいるかも。)
そんなことを考えながらタルトさんとショーが話してるのを聞いていた。
たまに尻尾に絡んでくるノルンの相手をしつつ時間を潰していると聞く事は終わったらしく書類をまとめ始めた。
「しばらくはこの街を拠点としてるといい。一時滞在から正式な滞在の許可証になるように申請しとくから後で取りに行ってくれ。まぁなにか困った事がこっちでも大丈夫だ。」
話が終わったので三人で外に出る。
「どっかいくのー?」
「俺は図書館かな?」
ノルンは露骨につまらなそうな顔をしていた。
「私は特にないかな?」
「じゃあなんか食べいこー?」
「いいよー」
「じゃあショー、いってくるね。お母さんに聞かれたら伝えといてー」
「はいよ」
お店が集まっている方へ向かいながら歩いていく。
「食べたいものは決まってる?」
「んー。特に無いけど美味しいものと甘いもの!」
「すっごい幅が広いよ、それは。」
思い付きで言ったのは分かってたけどいつも通りだった。
「まぁまぁ歩きながら決めよーよ」
「はいはい。」
背中を押されてながら、ノルンを尻尾でペチペチしとく。
「そういえば新しく隣の国の人が料理屋さん開いたって聞いたけど知ってる?」
「あー。聞いたけどまだいってないよー。評判はいいってー」
「じゃあお手頃価格だったらそこいってみよ!」
「おー」
一応の目的地は決まったので二人で料理の想像しながら歩いていく。
「ノルン。よだれ・・・」
「朝ごはん食べてないからお腹へったのー」
時間的にはもうすぐお昼に差し掛かっていた。
(お腹が減ったのは分かるけど、そこまでだらしない顔しちゃだめだよ・・・)
ノルンの頭の中は料理でいっぱいなのか、顔が緩みっぱなしでニヤニヤが止まらないという感じになっていた。
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