第12話
森からの帰り道
三人が仲良く話している横でため息をついていた。
(で、あれはどういう事なんだ?)
頭の中にいるマッドな奴に訪ねる。
『空気中の魔力を用いナノマシンを活性化して一時的に切れ味を増幅させました。』
(その結果、猪が頭から真っ二つになったと・・・)
そこでまた一つため息をつく。
(ん? あの刀って全部ナノマシンなのか?)
『いいえ。正確には表面がナノマシンで覆われているので、内部は素材は違いますが刀と変わりません。』
(って事は別に刀の形じゃ無くても西洋の片手剣みたいな形でも全く問題無い訳か?)
『はい』
(絶対に親父によるロマン武器じゃねーか・・・)
ふとした疑問に即答されて、頭を抱えてうずくまりたい気持ちになる。
(なんで他のものは目立たないようなってるのに武器だけそれなんだよ)
『記録によればかなりの費用と時間をかけて設計、製造されたようです。』
(いやナノマシン使うなら関係ないだろ。絶対に作りたかったから作っちゃった♪のノリだよな)
取り敢えずは武器は目立たないようにする事がわかったので良しとしてもう一つの疑問を投げかけてみる。
(今日ギルドにいった時には焦って細かく聞けなかったけど身体になにかしたか?)
変な機械のような物に手を置いた時に物凄く驚いた顔をした受付嬢の顔を思い出しながら。
『この世界の重力、大気などへの最低限の最適化が終了したので、身体的な強化は必要ないとの事でしたので、文献などで取り入れた魔法技術、スキル等を身体的に取り入れてありました。』
(それがあの機械で全て表示されたという事か?)
『はい。人体の魔力、身体能力を精査して発現しているものを表示する魔道具でした。』
(二度目の時は大丈夫みたいだったけど?)
『構造がそこまで複雑では無かったのでナノマシンを走らせ、平均データを取り入れ、それを表示させました』
(ん? 取り入れ? 表示させた?)
『データベースへのアクセスが容易だったので内部へ侵入し構造とデータを取得したのち平均値を出力させました。』
あの短時間でハッキングしてこちらの出したい情報だけ出して黙らせたと・・・
そして更にあまり聞きたくない事の報告までしてきた。
『国家のデータベースは容量が多いので転送は保留してありますが全て整理が終わっていますのでどこからでも取り出しは可能です。』
ダメだこの子、早くなんとかしないと・・・
この世界の全ての情報を把握していてそれをいつでも取り出しが可能な状態になっているという。ちょっと気を失いかける。
(いや通信装置みたいなのないぞ?)
『空気中の魔力を使って伝達が可能です』
うん。いろいろダメだ・・・
世界にスパイウェア放って、更に通信網も確保が終わってると・・・
普通に生きたかったんだが既にバレたら完全にアウトな状況が整ってしまっている。
(あーそれってバレないのか?)
『現在のこの世界の技術であれば全て回避可能で新技術で精査されても切り離しが可能な状態で構築されています』
(トカゲのしっぽかよ・・・)
国家機密とか手を出したく無いし、平和に普通に生きたいので忘れようと決意する。
下手な事しなければ被害が広がる事もなさそうなので思考をぶん投げたとも言う。
無駄に高性能なAIのせいで逃げ道が確保されているので人生詰んでるっていう状態ではないが、一般的な考えでは悪いようにしか思えない。
このマッドなAIをなんとかしたい・・・
とはいえ追い出すとかは出来ないだろう。ちょっと考えて聞いてみる。
(ナノマシンを身体の外に排出とか出来るのか?)
『現時点で全てのナノマシンを停止させると確実に死にます。』
予想以上の答えが帰ってきた。
(現時点ってことは?)
『細胞単位での変異が起これば六十年後であれば5%ほど生存確率があがります』
(死にかけてるじゃん・・・止めを刺せと・・・)
『いいえ。元の世界での寿命自体が処置次第では最大四百年ほどになります』
(あーそういえばそうだったな)
『この環境では計算上では百年程になります』
(まぁ過酷ってことか)
『こちらの世界に合わせた処置内容にする為には暫く時間がかかります』
まぁ数百年生きるっていう事に実感が湧かないな。
などと色々考えているうちに門に到着していたようだ。
バルが出た時のように門で手続きを行い、中に入っていく。
今日は採取してきた薬草があるのでギルドに寄ってから帰るようだ。
受付に行くときにカードを出すように手振りで教えられて、ラナに着いていく。
薬草と数羽の鳥と一緒にカードを出して待っていると受け皿に銀貨と銅貨を持って職員さんが戻ってくる。それを受け取るとラナは皆のほうに向かった。
銀貨を差し出されて受け取ると銅貨を三人で分けていた。
(あれ? どう考えても薬草の方が安いよな? 貰いすぎなんじゃ?)
それを伝えようとするとラナは両手を広げてなにかを伝えてくる
(あ、猪の分で多いのか。といっても突進してきて勝手に切れたのを獲物と主張していいのか?)
困惑しながら皆の方を見ると笑顔で頷いてくれた。
感謝しながら頭を下げると伝わったようだ。
(はやいとこ言葉を覚えないと生活もままならないな)
などど思いつつ、それぞれの家に帰っていく。
帰ると早速ラナのお父さんに銀貨を渡そうとするとなかなか受け取ってくれなかった。
押し付け合いをしているとお母さんがなにかお父さんに言ったのか、渋々という感じで受け取ってくれた。
いつまでもお世話になっている訳にもいかないなと思いつつ部屋に戻りベッドに横になるとそのまま眠ってしまったようだ。
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