第11話

門に着き、面倒な手続きは全部バルに丸投げしておく。


「終わったぞー」

「いこっかー」

「おー」


4人で外に出る。


「そういえば聞いて!」

「どうした?」

「ショーさんが年上だった!」

「それ重要な事なのか・・・?」


ちょっと呆れた感じで言われた。


「だって同じ位の歳だと思ってたんだもん。迷子になる位だから成人した位かと・・・」


 ちなみにこの世界の成人は16才である。

成人になると正式な市民としての権利と義務が生じる。


(初めて森に入って迷ったのかなとか思ってたのに…)


今日は遅めの出発と早めの昼食を出るときに食べて来たので荷物はほとんどない。


 この世界には腰の後ろに付けられるくらいの大きさの魔法の鞄がある。

魔法鞄といっても容量は2リットル位の水の革袋と一日分の食料と回復剤程度しか入らない。あとはちょっとした日々の買い物が楽になる程度だ。


 これは申請すれば簡単に買える物で国からも援助が出ているのでそこまでは高くない。

なんでも世界中での情報の共有の一部で作り方は普及していないが、鞄自体は経済の発展の為に国毎で作られ一般的になっているらしい。


 一応容量の大きいのもあるが値段も容量に応じて跳ね上がっていく。

そして持っているだけで税もかかり、一年ごとに検査して出し入れしたものに対しても税がかかる。持つときにも厳しい審査があり信用度のない者が持つ事が出来ない。


 主に税を払っても利益が出るような商売人や高位冒険者用という感じだ。下手に背伸びして手に入れたとしても税が払えなければ赤字だし、盗賊に襲われる危険性も上がる。


 しばらく歩いて主に薬草を取るのに適している場所に着いた。

ここは未成年だと来るのは厳しいが、たまに出てくる獣を撃退出来る力があればそれなりに収穫も見込める場所だ。


「ラナはショーさんと薬草採取だよな?」

「そだね。売れる薬草の見分け方からかな?」

「じゃあノルンと狩りでもしてくるよ」

「今日は鳥肉ー」


 今日は普通に獣の気配もしているので、この間のように魔物が徘徊している感じもしないし、薬草はやはり報酬としては高い物では無いので、バルとノルンは適当に狩りをするらしい。


「じゃあとりあえず別行動だね」

「いっぱい捕ってくるねー」

「おねがいねー」


 ブンブンとノルンが手を振りながら森の奥に入って行くのを、手を振って見送ってから振り返りショーさんに声を掛ける。


「じゃあ薬草探しましょう!」


ショーさんがコクンと頷く。


 少し歩いて見つけやすい数種類の薬草をショーさんに見せて、必要な事を教えると、さっそく2人で探し始めた。


 ちょっと様子を見ていたが、苦戦しているようだ。


(んー。匂いでの判別が出来ないと目で探すしかないからしょうがないよね)


 獣人であれば、ある程度の範囲を匂いで見つけてそこから探すことが出来るが、それが出来ないとすればあとは場所の目星を付けれる経験が必要になる。


 しばらく採取を続けてそれなりの数を揃える事ができた。


(そろそろ戻る時間かな? あの二人はきっと時間を忘れてるな…)


 近くを探ってみたが特に大きな気配もないので、少し離れた所で狩りをしているようなので声を掛けに行ってくるとショーさんに伝えると、一人で二人が向かった方へ行くとそれなりに離れた場所で狩りをしているようだ。

 

 さすがに声を出して呼べる距離ではなさそうなので近付いて声を掛けようと、歩き出す前に一応周囲に危険そうな獣がいない事を確認してから再度歩き出した。


 少し歩いていくと、二人は丁度最後の獲物を仕留めて戻ってきている途中だったようだ。


「とれたー?」

「いいかんじー」

「今夜の分と少し売りに出せるくらいだな」

「じゃあ帰ろっか」


 二人の報告を聞きながら戻ろうとした時、凄い勢いでショーさんの方へ向かって行く気配を感じた。


「なんか突っ込んで来てるから戻る!」


 慌てて二人を置いて走り出す。来た方向へ全速力で戻るとそこではポカーンとなったショーさんが座り込んでいた。


 私もポカーンとなった。後から二人も駆けつけて来たが更に二人もポカーンとなった。


 4人でポカーンとしてると、一番早くポカーンから再起動したバルが疑問を投げかけてくる。


「なに…? これ…? 薬草の採取してたんだよな?」

「う…ん」

「なにがどうしてこうなったんだ?」

「……さぁ?」


そこには猪が真っ二つの状態でショーさんの左右に並んでいた。


「え・・・っと。切ったのか?」

「…ここまで綺麗に切れるものなの?」

「いや。わかんない」

「すごーい!真っ二つ!」


猪は固い頭蓋骨から背骨、骨盤と全てが正面から二つに分かれていた。そしてショーさんの前には抜き身の刀が刃の部分を猪が来た方向に向かった状態で地面に刺さっていた。


「あれで切れるの?」

「いや、見せてもらったけどあの武器だとこんな切り方は無理だと思う」


バルは自分で言った事を否定する。しばしの間、皆で頭の上に?を浮かべつつも


「と、とりあえず処理しよう。ついでだからさっき捕って来たのも一緒にな」


気を取り直して獲物の処理を始めた。


 そしてバルの袋に詰め込む。バルの袋はお店で使っているものなので、普通の鞄よりは容量が大分大きい。武器防具などを扱うため相応のものを使っている。それを家から持ち出していると言う訳だ。


「それじゃ帰ろ」

「猪肉追加!」


そして4人で帰路に着いた。

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