第10話
ショーさんが来て一週間と少し、今日はショーさんを連れて皆で森まで行く予定だ。
数日前にショーさんが困った顔をしていたので、何事かと思ったら、どうやら滞在してるのにお金を出していない事を気にしている様だったのだ。
森の浅い所で薬草を採取するのはどうだろう?と提案した所、同意を得られたので、ギルドで登録をして、薬草の採取に向かう事になった。基本的に薬草は成人していない子が取ってきたものをギルドが買い取っているのだ。
他にも薪等、簡単な採取系なら常に買い取りを行っていて、家の手伝いの延長のような形になっている。ただ森などの危険地帯には入らない事を条件としている、もしその条件を破ってしまうとそれ以降の買い取りは行わない。少し厳しいように見えるが子供をなるべくなら危険から遠ざけるという面もある。
朝食を取ってショーさんの準備を待ってから家を出た。皆とはギルドで合流しよう。という事になっていたので、ギルドに到着するとまだ皆は来ていなかったので、先に登録しようと思いショーさんを連れて受付まで行く。
「すみません。登録したいんですけど・・・」
「新規登録ですね。ではこちらの用紙に記入をお願いします。」
「あ、登録はこの人なんですけど、言葉がわからないんです、登録は可能ですか?」
「はい。こちらの魔道具で簡単な適性検査と登録なら可能です。詳細な検査を行う場合は少し大型になりますので、別室に用意してありますが、犯罪歴、他国での活動記録などあれば照会も可能です。属性の適性の検査も同時に出来ます。」
(高性能な大型のもあるんだ・・・)
そういえば魔法に憧れていた自分を打ち砕いてくれたのは、この魔道具だったことを思い出す。
(身体強化系以外の魔法は生活レベル以上は望めませんって言われたんだ。)
過去の苦い思い出を掘り返されてちょっとぐぬぬっとなりつつも、自分の過去を掘り起こしてもしょうがないと思い直す。
「もしかしたら記憶喪失の可能性もあるのですけど・・・」
「んー。詳細検査の方がいいかもしれませんね。」
「じゃあ念の為、そっちでお願いします。」
もしかしたらそれで記憶への刺激になるかもしれないと思い詳細検査をお願いした。
「では、ご案内致しますので少々お待ちください。」
受付の人が後ろの人に声を掛けて立ち上がったのでついていく。
二階に上がり部屋に案内される。その部屋には受付にあった掌を置くだけの簡素なものではなく、1メートルほどの箱の上に掌を置く部分がついているものだった。
「では、この上に掌を置いて下さい。」
少し不安そうにショーさんがこちらを伺ってきたので笑顔で頷く。
恐る恐るといった感じで、掌をおくと魔道具から光がパァーと出て消えていく。
「名前はショー、犯罪歴、他国での活動歴もないですね。あと魔法適性などは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
受付嬢さんは固まってしまった。
ショーさんはあたふたしている。
「え?どうかしたんですか?」
「いえ。えっと・・・その・・・」
(ショーさんの魔法適性が全く無かったのかな?よし!ナカーマ!)
「魔力保有量が平均値の数倍あります。あと全属性と物凄い量の魔法とスキルが・・・」
目が点になってギギギっと擬音が出そうな感じでショーさんの方を向くと、凄い焦った感じで、もう一度確認してくれという手振りをしていた。
「あ、あの故障かもしれないのでもう一度お願いしてもいいですか?」
「んー。流石にそうですね。でも二週間前に点検してるはずなんですが・・・。」
受付嬢さんは頭に?マークを沢山浮かべながらも魔道具を操作している。
「ではもう一度お願いします。」
ショーさんは促されてそのまま掌を魔道具に乗せる。
「名前、犯罪歴、行動記録は同じですね。属性適性は4属性の火と風が基本より下で土と水は最低限ですね。特殊の方も反応はありますが、修練次第と言った所でしょうか。魔力保有量は平均値程度ですね。」
出力されたものを書類に書き留めながら答えていく。
(魔法の適性あるのかー。イイナー。)
などどズレた事を考えてると声を掛けられた。
「うん。大丈夫ですね。これなら問題なく登録出来ますので、残りの処理を下の受付で行います。では下に降りてカード作成に移りますので、受付に戻りましょう。」
そしてドアを出て受付に向かう。
「点検し直してもらわないといけないかしら?」
後ろから呟く声がした。
一階に降りた所で声を掛けられる。
「ラナ。時間間違えたのかと思ったよ。」
そこにはバルとノルンが待っていた。
「ショーさんの登録で詳細が分かる魔道具があるからそっちでみてもらってたんだ。もうちょっとで登録終わるよー。」
「はいよ。ちょっと掲示板の方見てるよ。」
「終わったら声掛けるねー。」
2人は掲示板の方へ歩いて行く。
常に出ている依頼の他に、急ぎの依頼や大量納品の場合は掲示板の方に依頼票が出ている場合もあるのでそれを確認しに行くようだ。割の良い依頼などは朝一で大体無くなってしまうので、ちょっと遅い今の時間だとあまり無いのだが、たまに残っている事もある。
受付につくと先程作った書類を打ち込み終わったようで最終処理を行っているようだ。
「では、こちらがカードになります。詳細の説明はどういたしますか?」
「今、言葉を勉強しているので、私が伝えるので大丈夫です。」
「かしこまりました。ではお気をつけて。」
受付から離れて2人の元へ向かう
「なんかいいのあったー?」
「なーい!」
「まぁ今日はショーさんの練習ってことで。行こー。」
そして4人でギルドを出ると門へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます