第7話
ショーさんが起きて翌日、門へ報告の為に朝食の時に身振り手振りで一緒に行くことを伝える。なんとなくその事を察していたのかそこまで苦労せずに伝える事が出来た。
準備をしてもらっていると持ち物の刀を持って行くべきなのか困った感じにしていたので
「持って行って見せるだけで大丈夫ですよ。」
抜く動作をしながら伝えると刀を持って準備は完了の様だった。
一緒に歩きながら街の様子を珍しそうに観察していた。
ショーさんは言葉の細かい部分はさすがに伝わらないようだが、しっかりとこちらの身振り手振りを観察して伝えようとしている事を一所懸命に理解しようとしている様なのでこちらも目をしっかりと見て話しかけている。
たまに近所の人に声を掛けられて茶化されたりしもした。
「おっ、ラナちゃん、見たことない人だけど彼氏かい?」
近所のおばちゃんに言われて慌てて否定する。
「ち、違います!ちょっと案内してるんです!」
おばちゃんは楽しそうな顔でニコニコしてスススッと近付いて来たので、捕まる前に早々に立ち去る事にした。
その後も門に行く途中で綺麗な花壇を指差してみたり、レストランの前で食べる仕草をしてみたりと案内をした。
「この街はとても良い所ですよ!食べ物も美味しいし、みんな優しいんですよ。」
ショーさんもこちらの顔を見ながらニコニコして頷いていた。
(言葉は分かってないと思うんだけど、なんとなく雰囲気で分かってもらえてるかな?)
などと不安になりながらも門へ到着した。
周りを見渡して顔だけ知っている兵士さんに声を掛ける
「今日ってタルトさんはいないんですか?」
「ちょっと街の方にいってるけど、すぐ帰ってくるよ。その人が昨日の人かな?」
「そうです。昨日、意識がもどったら連れてきてくれって言われたので。」
「じゃあ、ちょっと詰所の方で待ってて貰えるかな?帰って来たらすぐ行ってもらうよ。」
「わかりましたー。」
詰所のとこまで案内して貰って中の椅子に腰かけて待っているとほどなくしてタルトさんが書類を持ったまま入ってきた。
「すまんな。ちょっと急ぎの用ができて空けてたんだ。その男はもう喋れるのか?」
書類の束を近くの机に置きながら訪ねてくる。
「うーん、喋れるんですけど言葉が全然違うんですよね。お父さんにも聞いたけど他の国の母国語とかともちょっと違うみたいです。」
この世界では世界共通語と母国語がある。一応、国毎に言葉があるが世界的にどこに行っても使えるようにと作られた言葉というのも存在している。これは元々は国が国交をしやすいようにする為にという事だったらしいのだが、いまでは学校でも教えられることによってほぼ標準語になっているので、逆に母国語の読み書きが出来ない人もいるらしい。
「共通語の伝わってないような所から来たのか?」
「かもしれないですね。」
「それだと食事とか習慣も違いそうなものだが・・・特に変わった所もないんだよな?」
「そうですね。食事とかも普通にしてましたし。」
「そういえば気になる事があるって言ってたが解決したのか?」
「これです。」
ショーさんに身振りで刀を出してもらって続ける
「カタナっていう単語が浮かんできて、それを確かめたくて。」
「聞いた事ない単語だな?てかそんな理由だけで連れてったのか・・・」
タルトさんは呆れたような顔をしながらこちらを見る。
「えへへ。」
笑って誤魔化しながら
「これってショーさんになら抜けるみたいなんですよ。」
そしてショーさんに身振りでカタナを抜いてもらう。抜いて渡された刀を確認しながら
「魔道具の一種か?でも武器にしては上等な物には見えないな?」
「お父さんも同じ意見でしたね。戦いではちょっと役に立たなそうって言ってました。」
ショーさんに刀を返しながら
「まぁ敵意があれば気が付いた時点でなにかしら行動を起こしてるだろうから、どこから来たかとかの詳細は言葉が分からない以上またいずれだな。今後はどうする?」
「お父さんに聞いてみたら困ってるなら別に部屋を貸しといてもいいって言ってました。」
「じゃあ暫くはお前のとこに頼んどくか。なにか必要なものとかがあったら言ってくれ。
多少は経費で落ちるから。」
「じゃあ、美味しいケー「ラナの為の物じゃないからな!」
提案は言い切る前に却下されてしまった。ジトーっと見るとキッと睨み返された。
せっかく新しく出来たケーキ屋さんのケーキ食べれると思ったのに!
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