第3話

結局、狩りを始めたのはお昼近くになってからだ。

森に入って兎を3羽程とった頃、バルが呟いた。


「少ないな。」

「うーん、いつもより動物の気配がないんだよねー。」

「鳥とかも全然居ないねー。」

「やっぱり魔物のせいかな?」

「かもしれないな。あんまり奥に行くのはやめとこう。」


いつもよりは広い範囲を歩き回っているが、成果は少ない。

魔物の気配はないものの、動物の気配も少ない。


「粘ってもしょうがないから適当なとこで切り上げるか。」


3人の意見も一致した所で来た道と少し角度をずらしながら、

森を抜ける方角へ進み始めた。


しばらくして少し遠くに気配があるのを感じて2人に止まって貰う。


「どうした?」

「ちょっと大きめの獲物。熊だけど魔物だね。」

「いけるか?」

「バルが正面で抑えてもらえば、私とノルンで何とかなるよ。」


魔物と呼ばれるものにも強さの段階がある。魔力が強くなっていくと、

それに応じて体も段々と変化していくのだ。

そして今感じている気配からすると、そこまで魔物化してから時間が経って

いない個体のようだ。そして狭い範囲を何かを探すようにうろついている。


「ラナの言うことなら大丈夫だろう。成果も出てないし、ちょっと頑張らないと帰ったら親父にどやされそうだ。」

「おにくー。」


2人とも異論はないようなので、警戒しつつ気配のする方向へ進んでいく。

相変わらず何かを探すのに夢中でこちらには気付いて無いようだ。

ある程度まで近づくと熊の近くには人の匂いがあるのに気付く。


(人の匂いなんだけど…なんだろ?微妙に違うような?)


熊はその匂いを追うのに狭い範囲をうろついている。

かなり夢中になって、その匂いを追っているようで、こちらには全く気付かれることなく近付く事が出来た。バルを正面にノルンと左右に分かれ、ノルンが弓を撃つ準備が出来たのを確認すると、3人で頷きあう。


その時だった。熊が探していた者を見つけたのかのっそりと立ち上がった。

それに合わせてノルンが矢を引き絞り放つ。2人は距離を詰める為に走り出す。


ノルンの矢が首に刺さりこちらに気付いた熊は、振り返りバルに気付くと左腕を振り上げ、反撃をしてきたが、バルは盾で危なげなくそれを受け取めた。

そこへ二射目の矢が額の目に命中し、のけぞって空いた首元へ全力の一撃を入れる。

そのまま声を上げる事も無く熊は仰向けに倒れた。

その陰には木によりかかる人間がいた。


「襲われてたのか?」

「うん。多分?」


バルに曖昧な返事を返す。そして、こちらの姿を確認したのか、そのまま気を失ったようだ。

「声も上げてなかったし、見た目、ケガしてる感じじゃないな。」

「この人なんか匂い変?」


ノルンが首を傾げながらスンスンする。


「変?」

「うん。なんか人の匂いなんだけど、ちょっと嗅いだ事のないというかハッキリとこう違うっていうのは言えないんだけど。」

「この国の人間じゃないのかな?」

「まぁ気を失っただけみたいだし、起きたら聞けばいいんじゃない?」

「そうだな。さきに解体して安全な場所に行くか。」


3人でサクサクと解体を進めていく。

一通り後処理を終えて、ある程度時間が過ぎたが、その男は目を覚まさなかった。

自分たちの荷物もまとめ終えて周りを見てみると別の荷物があった。

見た目は自分達の使っているものと大差はない素材の大き目の袋と1.8mほどの棒状の袋だった。

取り敢えず連れて帰るにしてもその人の荷物なら持っていかないとと思い、それを拾いに行く。


「なんだそれ?」

「さぁ?武器かな?」


バルが棒状の袋の方に興味を示す。止める間もなく受け取ってすぐに開け始める。


「ちょ…人の持ち物だよ。」

「まぁまぁ、ちょっと見せて貰うだけだよ。」


引っ張り出して棒のような物を眺め回していた。


「なんだ?これ?」


端から30センチ程の所に円盤のような物があり、そこまでは綺麗に模様のようになるように紐がまかれており、その円盤より下の部分は光沢のある塗料が塗られていた。

バルは紐の巻かれた部分と光沢のある部分を持って引っ張っているようだが、なにも起きなかった。


「やたら綺麗だし、美術品かな?」

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