第2話
第二話
「起きろーーーー」
容赦のない勢いで部屋に突っ込んで行く幼馴染。
突っ込まれた方は物凄い勢いで何事かと飛び起きてるので成功のようだ。
「今日は南の森行くんでしょ!」
「え?え?」
私はもう一人の幼馴染の反応を苦笑しつつ眺めていた。
「10分以内に準備して行くよ!」
「あ…あぁ、分かった。準備す」
返答を半分も聞かずに、てててっと出ていく
ため息をしつつ、準備し始めた彼に苦笑したまま、手だけ振って
彼女を追いかける。外に出てしまったようだ。
外に出て見回すと猫のように伸びをしている。
まぁ猫の亜人の血を継いでる彼女の性格も猫のような感じだ。
名前はノルン。幼馴染で母親が猫の獣人、父親が人間のハーフだ。
「もうなんでみんな準備してないのー?」
「ノルンが早起き過ぎるんだよ?」
「だって目が覚めたんだもん!」
彼女はニコニコとしながら答える。
実をいうと私の部屋にも、さっきのように飛び込んで来た。
「あれ?ノルン、荷物は?」
「あーーー。ラナの家に忘れて来た!行ってくるー」
また風のように行ってしまった。
「お待たせ。あれ?ノルンは?」
「私の家に荷物忘れたって。」
それを聞いて彼は苦笑いしながら荷物を置いて装備を点検し始めた。
「そういえばバルの作ってくれた革鎧いい感じ。」
「動きにくいとかはない?」
「本職の人が作ってくれたみたいに動きやすいよ。」
「見習いだけど一応本職なんだけど…」
そう言いつつ、がっくりとうなだれる。
バルは鍛冶屋の息子で絶賛修行中。父親がドワーフ、母親は人間のハーフだ。
今はちょうど革系の装備品の作成を練習していたのでついでに作ってくれた。
「ただいまー。よーし行くよーー」
「なんでノルンはあんなに元気なんだ?」
「なんか目が覚めるのが早かったんだって。」
「じゃあお昼過ぎくらいには電池切れになりそうだな。」
「まぁ安全なとこで休めば大丈夫でしょ。」
3人で、てくてくと門へ向かう。
たまにノルンが私の尻尾にじゃれついて来るので、
捕まらないように動かしながら遊んでいたらバルに見つかってしまった。
「外では歩きながら遊ぶのは勘弁してくれ。」
「「はーい。」」
「ちゃんと警戒しながら遊びまーす。」「まーす。」
私の言葉にノルンがふざけながら乗っかる。
バルはその言葉を聞いてがっくりとうなだれていた。
とはいえ普通の人間よりは警戒力はあるつもりだ。
父が犬の獣人で母が人間だ。そして父の話によれば獣人に近い身体能力があるらしい。
小さい頃から若いときに冒険者をしていた父にくっついて、
狩りとかに行き、基本的な事は学んでいる。
そんなこんなで門に着くと外に出る手続きをする。
もちろんしっかり者のバルに丸投げだ。
ぼーっと待ってると後ろから声をかけられた。
「今日は3人だけか?ラトルーナ」
いつもの門番さんだ。ラトルーナとは私の名前だ。
「はい。ちょっと南の森まで。」
「あそこは比較的安全だが、最近は魔物の目撃情報がちょっと増えてるから気をつけろよ。」
「はーい。」
小さい頃から父親と一緒に狩りに行っているのを知ってる門番さんはそれだけ言って戻って行った。
「ノルンいっくよー。」
手続きを終えたバルが来たのでノルンに声をかける。
ふらふらっと離れていたノルンはてててっと駆け寄ってくる。
「なに捕れるかなー」
「魔物が増えてるんだって。普通の獣じゃ逃げちゃうからなー。」
この世界には魔物というものがいる。
普通の獣もいるのだが、魔力によって強化されて狂暴になるという特徴がある。
なので普通の獣を相手にするよりも、更に注意が必要になる。
危険度は上がるが素材になる物が多いので専門で狩っている人達もいるが、
中途半端な気持ちで近づくと命を落とすことになる。
「ゆっくりピクニック気分で行こっか。」
「ピクニックー」
「警戒は頼む・・・」
「だいじょーぶ。」
私も幼馴染をわざわざ危険な目に合わせるつもりはない。
それくらいの技量は父親から叩き込まれてる。
ある程度の距離からならば魔物と獣の判別もつく。
いざとなったら全力で2人を逃がす。まぁそうならないのがいいんだけどね。
小一時間ほどかけて森の近くの丘に着いた。
「休憩してから森に入ろっか。」
「お腹減ったー。」
「朝食とってこなかったからペコペコだ。」
適当な場所でみんなで食べ物を広げ始める。
バルはパンとチーズしかないようだ。まぁ確かにあの準備時間
でなにか用意してとかは無理だろう。
ノルンの方はというと色々と取り出し始めた。
蒸かした芋やら肉、更には焼き菓子などを出した。
本当にピクニック気分だったようだ。
料理というより食べれる物を適当に詰め込んだみたいな感じだ。
それをバルにぽいぽいと渡している。
呆れながらも受け取りもぐもぐと食べている。
終いには小さい樽。匂いから察するに葡萄酒だろう。
「ノルン…やけに大きな荷物だと思ったら…」
少し呆れた感じで言ったら
「バルなら大丈夫。はぐれた時にわかりやすいし!」
あっけらかんと返された。
当の本人は何も言わずに諦めたように煽っていた。
まぁドワーフの血をひいてるので多少の葡萄酒程度なら
水と変わらない。
「匂いでなんか釣れるかもしれないし!」
「囮かよ!」
さすがにバルも突っ込んだ。
そりゃそうだ。獣の中に突っ込まされたら堪ったもんじゃない。
他愛無い話をしつつ、食べ終わるとノルンは欠伸し始めた。
「早くも電池切れか?」
「んーちょっと寝るー」
いうが早いかパタッと寝てしまった。
「「はぁ…」」
相変わらずの自由さだった。
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