DistortedTopiaー歪められた世界ー
けだま
第1話
第一話
体の浮遊感が無くなり、瞼の上から光が当たってるのを感じる。
恐る恐るゆっくりと目を開けてみるとそこは外だった。
先程とは明らかに違う所にいるのは間違いないようだ。
目の前には木が立ち並び、周辺には自然が広がっている。
肌がピリピリとする感じがし微妙な違和感を覚える。
先ずは現状確認の為、周囲の観察を始めようとした時だった。
肌への刺すような痛みが走り、吸い込んだ空気は肺の中で爆発したような痛みが起こる。
体全体もまるで重力が増したようにズシンと重くなり、その場で倒れ込んでしまった。
(な・・んだこれ?)
痛みと重さで指先すらピクリとも動かせない。
(ヤバい。このままだと確実に。)
自分の死を予感した時だった。
頭の中に無機質な感じの声が聞こえてくる。
『現状での生存確立は0%。生命活動は11分で完全に停止します。』
(いやいやダメだろ。なんとかならないのか?ここで終わりかよ。)
『改善案として休眠しての身体能力環境適応を提案します。』
(ん???この声は?思考に対して反応してるのか?)
『完全適応を完了する為の予想時間としては316分になります。その間は完全に活動が出来ません。』
(それは無茶だろう…状況がわからない状態で危険すぎる。)
混乱しつつも無機質な声に対して問い掛けてみる。
(意識を保ったままの代案はないのか?)
『危険を避け、意識を保つという条件が揃った状態ですと、一部身体能力の制限と苦痛、生命活動への優先度の低い身体への損害が挙げられます。最低限の適応が完了は592分。損害の完全修復には735分となります。』
(きつそうだが生き残るには損害とやらには目を瞑るしかないか・・・、痛みは抑える事は?)
『完了時間の誤差を許容可能であれば、作業中の調整が可能です。』
(ではそれで作業開始してくれ。)
『作業を開始します。』
声の主ははっきりと頭の中で了承し、体の中でなにかをしているようだ。
少しずつだが呼吸が出来るようになってきているようだ。
それに伴って辛うじてだが体が動くようになっている。
痛みに耐えつつ木に寄り掛かる。
「さて、何もなく過ぎてくれる事を期待しとくか。」
自分で呟いてフラグだなと苦笑しつつ軽く飛びそうになる意識を保つ。
周囲には木が生い茂り何かしらの気配が感じられるし、
適応とやらが終わってない為か聞こえにくいが何かの鳴き声っぽいものも聞こえてくる。
一見した感じだとやはり生態系は普通に存在してるようだ。
ただ現在地もわからない上に地球だったとしてもこんな森の中で一人で居たくはないだろう。
「痛い思いして意識をそのままにしたんだから取り敢えずは少しでも身を隠せる場所を探すか…」
周囲を見渡して観察を開始する。
ざっと見た感じでは極々、普通の森に見えるが、別に植物に詳しい訳ではない、ぱっと見ただけでは判別は難しい。
「なんだってこんな状態になってるんだか」
そんな愚痴をこぼしつつ朦朧とした意識の中でなにかの気配がある事に気付く、
いまいち遠近感がはっきりしない為、近いのか遠いのかもはっきりとは判別出来ない
なにかを探しているようなうろつくような感じがする。
(ったく、フラグなんて立てるもんじゃないな、ホントに)
少し前の自分を恨みつつも、近くになにかないかを急いで探す。
ぼやっとした視界の中には武器になりそうな物はなく、
隠れられるような場所も見あたらない。
次に体の確認をしてみる。取り敢えず呼吸は普通に出来るようにはなってるようだ。
だが、自由に動くのはかなり難しそうだ。
先程からの気配も離れていく様子はない感じだ。
せめて目と耳だけでもはっきりしないと。
頭の中の声に少し問い掛けてみる。
(目と耳を優先することは出来るか?)
『可能です。』
(実行してくれ。)
『了解しました。』
良い話相手にはなってくれそうにもないな。などと意味のない事を少し思いつつ
なにをしているかわからない相手に作業を頼む。体の中になにかがいるっていうのはあまり気持ちのいいことではないが、取り敢えずは味方?のようなので、今はこっちは置いておこう。
少しずつだか視界が明瞭になるとともに酷い耳鳴りが終わるように聴覚も戻ってくる。
そして間違いではなく何かの足音がすることがわかる。まだこちらをはっきりと認識して向かって来ている訳ではないようだ。
視認出来る範囲にも足音の主はいないようだ。
改めて周囲を確認するが状況は
(あぁ、これはまともに動けたとしても出会ったら駄目なやつだな。)
と少し見当外れな事を思いつつ覚悟を決めた。
そして予想通りな感じで熊?は両手を広げ襲いかかる体制をとったところで目を瞑り…
(あれ?)
何も無かった。前方から熊?が倒れたような音と共に、その後ろから数人の足音が聞こえ始めて、ゆっくりと目を開ける。目の前には倒れている熊?だ。
(???)
状況を把握するのに思考が追い付かない。そして足音は近づいて来たが、自分に気付いたのか左右に分かれている。
視界に入った相手は人間のようだった。そこで獣では無い事への安心感からか意識は途切れてしまった。
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