第5話3

 真夜中。月明かりが201号室へ続く廊下を青白く不気味に照らす。


 それを階段の影から見つめる、2名の成人男性。この姿を誰かが見たら、まるで泥棒が空き巣に入る部屋を品定めしているように見られるだろう。だが、それくらい慎重にいかねば、あの部屋にいる得体の知れない何かに気づかれてしまい、場合によっては憑かれ殺されると思った。高橋さんと俺は寝ている番犬を起こさぬ盗人のようにゆっくりと歩きながら、201号室の前に到着した。



 『で、どうするんですか?高橋さん』



 『そうだなぁ・・・』



 俺はその高橋さんの癖に見覚えがあった。高橋さんは手を顎にあて、ゆっくりと空を見上げたのだ。俺はこのとき、この人が何も考えずにここに来たことに気づいた。



 『チャイムでも鳴らしてみるか?』



 (まじか、この人)



 『何いってんすか、とり憑かれでもしたらどうするんですか!』


 俺はもう泣きそうだった。そう、俺はその手の類いが昔から苦手なのだ。科学者の卵のくせに。



 『全く、心配性だな、君は』



 すると、高橋さんが目下にある何かに気づいた。視線を辿るとそこにはドアの郵便受けがあった。



 俺たちは顔を見合わせて、同じ考えであることを互いに悟った。




 そのとき、中からあの衝撃音が響いた。




 (聞こえる)


 

 2階の住人は今この部屋の中にいる。

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