メンバー初対面 〜影の天才〜

 またダメか。青木は頭を抱えていた。すると、サッカー協会委員長に会議室に呼ばれた。青木は浮かない表情で会議室に向かった。

 「西野優馬は本物の天才だ。彼が日本サッカーを変えてくれるんだ。彼が代表に入らないならオリンピックいやワールドカップすら取れないぞ。」広い会議室に勢いのある低い声が響き渡る。青木はどうしても西野優馬をオリンピックの代表に入れたいのだ。「青木君落ち着きなさい。彼は本物の天才かどうかは知らないが彼の方からオッケーの返事がない以上こちらとしてはどうにも出来ない。」とサッカー協会委員長齋藤が青木に話した。

コンコン!

「失礼します!会長。今西野君から連絡がありまして。青木監督に電話をもらいたいとのことなんですが。どうなさ、、?」秘書の樋口が話してるのにも関わらず青木はすでに席を立って外へと飛び出していた。

 「もしもし!西野か!なんだ話って!」青木は息をあげながら電話をかけた。すると西野は重く口を開くように話し出した。「監督。俺の夢は世界一のサッカー選手になることなんです。俺を世界一のサッカー選手にしてくれますか?」と問う西野に対しいつもはクールな青木だが、この時は強い口調で「当たり前だ。俺がしてやる。そのかわり俺を世界一の監督にしてくれよな?」と言った。「なら、お互い目指すものは一緒ですね!」と笑顔で西野は答えた。


 「父さん行ってくる。」仏壇にボソッと呟き太陽が昇りだしたのを確認し家を出た。新幹線に乗り気温が徐々に上がる東京都新に向かった。

今日から俺の新たなサッカー人生が始まるんだ。西野は新しい環境でサッカーをできることに胸を高鳴らせていた。だが、この日『天才サッカー選手西野優馬』が人生で初めて挫折を味わう日になるとはこの時西野は考えもしなかったのだ。


〜練習場〜

 全面緑の戦場にいち早く足を踏み入れた西野は鞄からボールを出し誰よりも早く練習を始めた。すると奥に人影が見えた。目を凝らして見てみるとそこには西野よりも遥かに背の高い人がボールを蹴っていたのだ。するとこちらに気づいた人影が西野にボールを蹴った。「は!?嘘だろ、、」西野は驚いた。無理もない。ゴール前にいた人影から西野までの距離は100メートル以上あったからだ。それをノーバウンドで胸元にピタリと。「君!!西野君でしょ?」大きな人影が響くような大きな声で話しかけてきた。西野は慌てて「はい!そうです!西野優馬です!よろしくお願いします!」と同じく大きな声で言った。すると人影がこちらに走って近づいてきた。段々近づいてきた人があっという間に西野の前に来ると西野は上を見上げるほどの巨人だった。するとその巨人が「おはよ!早いね!俺、北川!北川和樹!よろしくね!」と言った。西野は驚いたが「おはようございます。西野です。よろしくお願いします。北川さんも早いですね。」と暗めの声で返すと北川が「そんなことないよ!それより!君『サッカーの天才』だろ?超有名の!俺西野君と同い年なんだよ!タメ口で話そ!」と馴れ馴れしく話しかけてくる北川に対し西野は怒りが湧いてきた。「そうなんだ。あのさ、『サッカーの天才』じゃないから。そうやって呼ばれたくないんだよね」と口と目を尖らせて言い放ちその場を離れた。

なんなんだよ。あの巨人は。180後半くらいはあるだろ。クソ。

西野がイラついていたのは『サッカーの天才』と呼ばれたからだけではなかった。西野の身長は169センチ。それに対して北川は190センチ近くあったからだ。そんなことにイラついていると「西野!早いな!」聞き覚えのある声の方を向く西野。「あ、青木さん!お久しぶりです!早くサッカーしたくって!」と明るく話し出した。「そうなのか!練習前にミーティングがあるから会議室に集まれよ!そこで招集メンバー顔合わせだ。」と言われ笑顔が溢れてしまった西野。全国のめちゃくちゃうまいサッカー選手が集まってくる。こんなにワクワクすることが他にあるのか?絶対に楽しんでやる!と胸を躍らせていた。


〜会議室〜

 「全員集まったな。監督の青木だ。よろしく。早速だがここに集められた18名が夏に行われる『東京オリンピックサッカー日本代表』だ。よろしく頼むな。」と青木の言葉があるといきなり背番号が発表された。「背番号1番金川。2番平山。3番、、、、」とマネージャーの木村から発表されていく。「10番西野。」と発表され周りからは「あれが『サッカーの天才』か。やっぱりオーラが違うな。あれで高校生かよ」などと聞こえてき西野はまたイライラしていた。更に西野をイライラさせたのが「高校生でオリンピック代表かよ。大丈夫かよ。あんなチビで」と言う言葉だ。なんと代表に呼ばれている高校生は西野1人だけだったのだ。その他はプロのチームでプレイしている選手や大学で鍛え上げられた選手などが中心だったのだ。そのチームで高校生が1人だけ選ばれて背番号10番を与えられたら周りの選手からそのように言われるのは仕方ないことだろう。「え?年齢とかサッカーに関係なくね?高校生だからとかチビだからとか関係ないだろ。てか、俺も高校生なんだけど?」と1人の男が立ち上がり言い放った。その男が北川和樹だ。「自己紹介遅れましたー追加招集された高校2年17歳の北川です。よろしくお願いしますー」とふざけたように自己紹介した。え?こいつ俺より年下?西野は驚いた。

「はいはい。これでとりあえず一旦解散。練習は軽くランニングして終わりだから着替えてグラウンドに集合。はい。解散」と青木が言うと全員ゾロゾロと会議室を後にした。


これが北川和樹というもう1人の天才との出会いだった。


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