第7話 筋トレ勇者 〜1日100万回のトレーニングで俺TUEEEEにのし上がる!〜
目の前に立っている白髪の少女。
歳は俺と同じくらいだろうか?
その手には、短い木の枝のようなものが得物代わりに握られている。そして、そんな彼女がいきなり俺に襲いかかってきた。
「……ぐッ?!」
酸欠でろくに動かない身体。
俺は転がって逃げるだけで精一杯だった。
だが、紙一重で攻撃は回避できた。
「危ないな……一体何するんだ! 何者なんだ君は!」
「……それは私のセリフだ。いつまで無様な姿を晒しているつもりだ?」
「……ッ!」
彼女に煽られた瞬間、俺は慌てて立ち上がり、得物を構えた。身体中が痙攣しながらも、力を振り絞り、立ち上がった。
「お前のことは女神――
それを聞いて少し動揺する俺を後目に、彼女は続ける。
「だけど何だそのザマは……期待外れもいいとこだ。どうやらお前は……あの方との修行から何も得てはいなかったようだな」
そして、彼女はまたしても俺に攻撃を仕掛けてきた。
「……ぬぐッ!!」
蹴飛ばされ、はるか後方へと吹き飛ばされ、地面に腰をついてしまう俺。
そんな俺を見下ろしながら彼女は言った。
「さぁ立ち上がれ……そしてかかって来い。私が骨の髄まで叩き込んでやる。童夢様との修行……その真の成果をな」
………
……
…
今日からまた日記をつけることにした。
彼女――白髪の少女との修行。
それを骨の髄まで徹底的に叩き込むために……
ユグドラシル日記・1日目:
『白髪の少女――ルナが教えてくれた女神様との修行の真価。それは、魔力を生み出す強靭な心臓を作ることだそうだ』
2日目:『「強靭な心臓」。それは何度も死にかけ、生死を彷徨う中で鍛え上げられる心臓の究極形だとルナが教えてくれた』
3日目:『ユグドラシルの無酸素空間は、まさに生死を彷徨うのにうってつけの環境だ。
そして、俺はまずそれに極力慣れる訓練から始めた』
ほぼ空気が存在しない中、ひたすら腕立て・腹筋・背筋をやり続けた。回数はもちろん100万回ずつ。
当然、その途中に俺は何度も死にかけた。
7日目:『修行が始まって一週間が経つと、俺は呼吸をしなくてもある程度動けるようになった』
14日目:『さらに一週間後、俺は無呼吸の状態でも「剣術」が使えるようになった』
21日目:『そして三週間後、ついに真空の環境下でも問題なく動けるようになり、無呼吸の状態で数時間ぶっ通しで戦い続けられるようになった』
30日目:『一ヶ月が経つと、俺はすでに人間の領域を超越していた。
呼吸するだけで魔力をほぼ無尽蔵に生産でき、刀で肉を斬られる程度の傷なら、数回息をするだけで完治できる。
さらには無呼吸でも丸一日「剣術」をフル活用しながら戦い続けられる』
まさに化け物。
育てた本人であるルナからも、「もはや人間ではない」と言われたほどだ。
31日目:『そして、ルナはそんな俺にとある究極の奥義を教えてくれた。
「
32日目:『死に直面ししたとき、心臓の拍動が極限まで速まることで発動し、あらゆる事象がスローモーションに見える「走馬闘」。
全身に薄紫色の模様を浮き上がらせ、身体能力を極限まで強化する「刻印」。これらの修行が始まった』
「走馬闘」と「刻印」。
これらを習得するためには、ひたすら戦う以外方法はないと言われた。
だから俺はひたすらにユグドラシルを登り、とにかくモンスター共と戦い続けた。
そして……
100日目:『無心で、ただひたすらに戦い続けて早100日。ついに薄紫色の模様が俺の全身に浮かび上がった』
長い修行の末、とうとう「刻印」と「走馬闘」の二つの究極奥義を会得した。
すると、いつの間にかルナの姿は消えていて、俺は『ユグドラシル』の頂上に立っていた。
そして、俺の目の前には圧倒的な存在感を放つ七色に輝く果実と、女神様の姿があった……
「ディルムッド・ゼクシア……よく最後までやりきったな。キミは……本当にすごい子だ」
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