第30話ですわ!



 と、いうわけで!

 冒険者装備のわたくし再びですわ!


「……ええと……まずはハイル様たちを探さなくてはいけませんわね」


 エレメアン王国、城下町『メアン』。

 プレイヤーさんが買い物したり、装備を整えたり、生産したりする場所ですわ。

 他にも町はありますし、最初のシナリオ後、他国へ亡命した後はあまり栄えていない町である程度の生産スキル熟練度を得ればお店を開く事もできますわ!

 生産系スキルも種類があります。

 武器屋、防具屋、はたまた武具屋。

 もしくは道具屋、薬屋、服屋(アバター屋さんですわね!)、雑貨屋。

 お酒屋さんや宿屋さん、レストランにカフェなんかも開けちゃったりしますわよ!

 けれど、少なくともこの王都城下町は他の町よりお店を持つ難易度が高いので、プレイヤーのお店は限られております。

 敷金と建物代、リフォーム代とか超お高いんですわ。

 まあ、それは良いとして……わたくし城下町は初めて来ましたから迷いそうですわ。

 早くハイル様たちを探さなければ。

 なんとかしてハイル様とエルミーさんを二人きりにして……デート……は、無理でもそれっぽい感じにしなければなりませんわ!

 二人きりにすればデートイベント完了って事になったりなんかしませんかしら!


「そういえば、ハイル様たちは例のプレイヤーたちを探しているはずですのよね?」


 という事は彼らがいそうなところを探せばハイル様たちの事も見つけられるかもしれません。

 プレイヤーの溜まり場といえばギルドか酒場か武器屋、防具屋、食材屋、道具屋……。

 ギルドや酒場は真っ先に探しているはずですから、あえて別な場所から探しましょう。

 うーん、プレイヤーが行く場所……。


「…………懸賞屋!」




 懸賞屋とは懸賞金のかかった盗賊NPCやプレイヤーを狩った時に賞金をもらえる場所ですわ。

 彼らは『カルマ値』の高いプレイヤーでしたから、もしかしたら懸賞金がかけられているかもしれません。

 例えかけられていなくとも、王立貴族学院の生徒NPCを殺したのが彼らで間違いなければ自動的に『カルマ値』が跳ね上がり、犠牲になった女生徒の親から懸賞金がかけられている(設定の)はずですわ。

 彼らがそうなっている事を知っているかは分かりませんが、賞金首になった瞬間から懸賞屋では『おおよその居場所』が賞金稼ぎプレイヤーに情報として提供されるようになるのです。


「…………」


 それにしても、女生徒のNPCを惨殺するなんて一体何を考えているのでしょうか。

 NPCに危害を加えれば『カルマ値』が上がり制限が増える。

 自由度が売りの一つであるこのゲームで制限を増やす事になんの意味が?

 NPCは……殺しても修復が可能です。

 わたくしのように『死の役割』がある場合は別でしょうけれど……そんなわたくしでさえ新しいプレイヤーをお迎えする時には恐らく復活するでしょう。

 あまり考えたくはありませんが、そんなNPC相手だからこそ…………殺した……?


「っ」


 いえ、決めつけるのは良くありません。

 けれど、ではなぜ?

 なぜそんな事を?

 他のNPCたちが怯えるほどに酷い壊し方をして、なにがしたいのでしょう。

 見つけたら問いたださねばいけませんわね。


「あら?」

「え? キャロラインさん!? どうしてここに!」


 懸賞屋を見つけて入ると、入り口の掲示板にエイラン様がおられましたわ。

 まあ、偶然!

 ……な、はずはありませんから、エイラン様もわたくしと同じ事を考えたと見て間違いないでしょう。


「ふふ、わたくしはもちろんハイル様とエルミーさんのデートイベント達成させるべく監視に来たのですわ!」

「あ、ああ、なるほど……びっくりした。……学院に行って事情を聞いて犯人探し始めたとかではないんだ?」

「それも兼ねております」

「やっぱり? ダメだよ、危ない」

「分かっておりますわ。ですが、あの女生徒はわたくしの友人の一人でしたの。理由も分からず友人が殺されたら、貴方はなにもせず大人しくしていられまして?」

「う……」


 そうですわ。

 あの子はわたくしの友人……取り巻きNPCの一人でしたの。

 その子が……見てはいませんが無残に壊された。

 いくら直るとはいえ許せません。


「ゲームの中だから……。NPCだから……。そんな理由で壊されるなんてたまったものではございませんわ。いくら命のないわたくしたちでも、怒りは感じます! ……あの方々が犯人なら一言言ってやらなくては気が済みませんわ! よくもこのゲームの最初のシナリオで『カルマ』を背負っておきながら、また『罪』を重ねるよな真似をなさいますわね! って!」

「…………」


『カルマ』とは業の事です。

 これは運命付けられた罪の形。

 ですが、それ以降の『カルマ』はプレイヤー本人の意思で重ねていく『罪』です。

『カルマ値』という形で合算されていきますが、正しい行いを心掛ければ減っていくものです。

 なのに、それをわざわざ増やす行い。

 まさしく『罪』そのものですわ!

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