第29話ですわ!



「おは……あら、皆様どうなさいましたの?」

「キャロライン様! ああ、良かった……ご無事でしたのね……」

「?」


 ハイル様とのお話の翌日。

 登校したら数人の生徒NPCたちに取り囲まれましたわ。

 しかも皆さん心配そう。

 わたくし、最近はエルミーさんに追いかけ回される事が多いので良くこのように心配はされますけれど……朝から?

 そんなに心配なさらなくともよろしいですのよ?


「キャロライン様、本日は学院はお休みです。……ご連絡があるまでご自宅で待機ください」

「? どういう事ですの?」


 そして校舎に入るなり教員NPCから回れ右をさせられます。

 なぜ?

 なんでですか。

 エルミーさんがログインしていないから……は、理由ではないでしょう。

 その上なんと、教員NPC権限で校舎立ち入り禁止になりましたわ。

 NPCとしてのランクはわたくしの方がうえですのに。

 …………こんな事ができるのはわたくしと同ランクのNPCか、それ以上の存在……管理者……マスターぐらいですわね?

 首を傾げつつ、教員NPCを睨みあげます。

 わたくし、これでも悪役令嬢としてこのゲームにいるのですから!

 なかなかに睨むのは得意なのですわよ。


「自宅待機は構いませんが、学院に入れて頂けないのはなぜなのです?」

「…………校内にバグが見つかり、修正中なのです。NPCに影響がある可能性が高い為、立ち入り禁止との指示がマスターから……」

「! …………そうですか。分かりましたわ」


 ふーむ、やはりマスターのご指示ですか。

 それでは致し方ありませんわね。

 マスターはこのゲームの管理者。

 このゲームを創った方々の総称ですわ。

 その中のどなたかが、バグの修正の為にNPC立ち入り禁止と仰るのなら皆素直に従います。

 しかし……。


「…………」


 校門まで来て、わたくしを心配そうに見ている数人の生徒のNPCに近付きます。

 皆様も院内には入れなくなっていますのね。

 一般生徒のNPCまで追い出されるなんて少し……いえ、かなりの異常事態に思います。


「ねえ、本当はなにがありましたの?」


 一人の女生徒NPCに問うと、彼女は俯いて他の生徒たちを見渡しました。

 しかし、すぐに怯えながら「実は……」と口を開き実情を教えてくださいましたわ。


「…………女生徒が襲われた!?」

「は、はい。無残に斬られたり、刺されたりして破壊されていたんです。っ……! 壁や、床も……それで……ハイル様が、キャロライン様が来られる前にマスターに連絡して……」

「…………っ……!」

「院内のデータには先日の四人組のプレイヤーが映っていたそうです! やられたのは、あの時食堂で人質になっていた女生徒でした。だからハイル様はキャロライン様の身を案じられたのです」


 男子生徒の一人が付け加える。

 わたくしの身を、ハイル様が……。


「……ハイル様は?」

「今うちの学院に通っている二人のプレイヤーと町に犯人のプレイヤーを探しに行かれました。キャロライン様はお屋敷で待機してください。例のプレイヤーたちの狙いはキャロライン様にも及ぶかもしれません」

「そうです! キャロライン様はお屋敷へ! キャロライン様はあんな奴らの手にかかってはいけないお方なのですから!」

「そうですわ!」

「…………。ありがとうございます、皆さん。そうさせて頂きますわ」


 プレイヤー二人……。

 エルミーさんとエイラン様ですわね。

 確かにあの二人と一緒ならば問題ないと思いますけれど……。

 いえ、お待ちになって?

 エルミーさんとエイラン様?

 二人と?

 ハイル様の三人で?

 え? エイラン様がいなければ強制デートイベントという事にできません?



「………………………………」

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