第26話ですわ!
「くっそくっそ! クッソクッソ! 男が! 男がおれの尻を蹴りやがってちくしょう! おれは女の子に蹴られたいんだぞー! つーか今の
「変態は放っておくとして……ハイル王子、例の逃げ込んだプレイヤーたちは見つかったのか?」
「いや、それがまだ一人も見つかっていない。
恐らく固まっているとは思うが……」
エルミーさんが半泣きで抗議しておりますがお二人はスルー。
ああ、そういえばそちらも問題でしたわね。
一応この学院は一般プレイヤーも校内に入る事は可能です。
ただし、生徒ではありませんからスキルの取得は不可。
そして、あまり長時間いるとそのプレイヤーの『カルマ値』によりNPCに通報義務が生じます。
主に『カルマ』を犯したプレイヤーが、善行を積む事なくプレイしてきた場合や、他のプレイヤーに迷惑を掛けたり、
いわゆる『賞金首、賞金上乗せ』状態になるんですの。
それでなくともプレイヤーは最初のストーリーを終えた後、国から追われる身になりますのよ?
他国に亡命して一旦は自由の身になりますが、そのように悪さばかり積み重ねていれば亡命先でも悪名が広まり、亡命先のNPCも敵に回るのですわ。
五つの国全てで『カルマ値』がいっぱいになると、もう『隠遁』スキルなしでは買い物もできませんし町へも入れません。
そこまでやらかすプレイヤーは、さすがに滅多にいませんけれど……。
「結構『カルマ値』が高そうな方々のようですわね」
「ああ、院内の気配がピリピリしている。早く探し出して追い出さないと」
「うん? 『カルマ値』ってなぁに? キャリーたん?」
んん、エルミーさんはご存じないのね?
まあ、あなたにも無関係ではないからご説明しますわ。
「『カルマ値』は悪行を重ねると増えるんだよ。善行……NPCの依頼をこなすと減っていくし、ある条件をクリアすれば『カルマ値』がゼロになるし、善行を積めば『名声』になったりする。『カルマ値』が高いとNPCに嫌われてゲーム内で色々制限がかかるんだ」
「キャリーたんに聞いたんだけど……まあいいや、ふーん」
「…………」
その通りですわ。
『カルマ値』はある条件をクリアしなければ『ゼロ』にはなりません。
その条件とは最初にプレイヤーが殺害した相手の『真実』を突き止める事。
それにより、最初にプレイヤーがチュートリアルのストーリーを行い、殺人の罪により入国不可だった最初の国への入国が可能となるのですわ。
エルミーさんの場合はこの国ですわね……。
「そう、分かりやすく言うと今の君がキャロラインさんに嫌われて怯えられているこの状況!」
「うん、とても分かりやすいな」
「んな! そんな事ないよねー? キャリーたん!」
「………………」
サッ、と目を逸らしてしまいましたわ。
悪役令嬢としていかがなものかとは思うのですが、こればかりは……!
実に的確な表現ですエイラン様!
「ハイル様、大変です! 院内に『カルマ値』の高いプレイヤーが!」
あれは、生徒会役員NPCですわ。
慌てた様子でハイル様に駆け寄って来ました。
『カルマ値』の高いプレイヤーは近くにいるとNPCに居場所が伝わりやすいのですわ。
えーと、NPCには『カルマ値』を感じ取れる設定がありますのよ。
わたくしも院内に『カルマ値』を感じます。
でも、はっきりとした場所までは分かりません。
近くにいる、という事だけは分かるので、他のNPCもそうなのでしょう。
恐らくもっと『カルマ値』が高かったり、側に近付けば『犯罪者』と認識して警備兵に通報できるのですが……。
今のところ『他国で犯罪を犯した危険な人が側にいる』程度の感じなのですわ。
「居場所が分かったのか?」
「は、はい! 食堂に押し入ってきて、女生徒を数人を人質にして、食事を要求し始めて……」
「なんだと?」
「ハイル様……」
「ああ、行ってくる。キャリーは教室に戻っていてくれ」
「戻ろうキャリーたん!」
「…………。俺の側を離れるなよ」
「はい!」
教室へ戻るのは違う意味で危険と判断致しましたわ!
というわけでハイル様とエイラン様、渋々付いてきたエルミーさんと食堂へ向かいます。
それにしても……食事を要求なんて、図々しいにも程がありますわ!
学院の施設は学生しか利用できませんわよ!
「おおい! だから腹減ってるって言ってんだろ!」
……食堂に近付くと、なんとも乱暴な言葉と大声。
ハイル様の後ろから食堂を覗き込む。
まあ! なんてはしたない!
テーブルの上に足を載せる方や、女生徒の肩を抱き寄せて体を触る方、お酒を持ち出し呑んだくれる方……そして大声で厨房のシェフへ怒鳴る方。
四人のプレイヤーさんがおられます。
中でも許し難いのは——!
「その女生徒を解放なさい!」
「キャリー!?」
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