第8話ですわ!



「いっ!」


 痛い!

 頭が……っ……痛い?


「………………なにを……わたくし、なにをしていたんだったかしら?」


 ええと……あ、そうだわ、プレイヤーさんを虐める計画を立てていたんですわ。

 どこまで確認したのでしたか……ああ、お勉強のところまでですわね。

 この流れで、ハイル様はプレイヤーさんを気にかけてられ、ある程度スキルを増やすと実戦訓練に連れて行ってくださるのですわ。

 最初に申し上げた通りこのゲームはレベル概念がございません。

 ので、PSプレイヤースキル頼みですの。

 実戦訓練は学院のお外の森ですわ。

 そこに二人きりでお出掛けするのです。

 この時、確か『狩り』と『鑑定』と『採取』のスキルをゲットできるんですわ!


「そして! わたくしの登場ですわね!」


 学院に帰って試験の結果を報告するべくハイル様と別れたプレイヤーさんの前に、満を持してわたくしが立ちはだかるのですわ!

 新たに覚えた『狩り』のスキルを教師に見せて実戦訓練の課題は終わりなのに、キャロラインたちがそれを魔法スキルで妨害するのです!

 なんてやる事が小さいのでしょう。

 ここは正々堂々と、模擬戦でやっつけてやるべきですわよね!

 ええ、このイベントでは魔法で妨害などせず、一対一で正々堂々妨害して差し上げれば良いのですわ!


「まあ、妨害された試験は翌日やり直してきちんと合格するのですが……。はあ、いよいよこのイベントですわね」


 このイベント…………デートイベントですわ!

 実戦訓練で距離をますます詰めたプレイヤーさんは、これまでのキャロラインによるランダム虐めイベントで失くした私物や、ダメになってしまった物を買い足しに出かける事にするのですわ。

 ハイル様はそのお話を詳しく聞くべく「一緒に行ってもいいか?」とプレイヤーに問いかけます。

 ここでノー、という選択肢は無論あるはずもなく……プレイヤーさんはハイル様とのリアルデートを体験するのですわっっっ!


「……ハイル様とデート……」


 キャロラインは一回もありませんわね。

 まあ、当然ですわ。

 だってハイル様は、インヴァー家の権威で致し方なくわたくしと婚約したのですもの。

 わたくしの機嫌を損ねれば、お父様やお祖父様に告げ口されるかもしれないと内心戦々恐々としておらるのですわ。

 はあ、なんてお可哀想なハイル様。

 わたくし、必ずや立派にハイル様とプレイヤーさんにギャフンされてみせますわ!

 わたくしへのギャフンを足がかりに、ハイル様ならば必ずやインヴァー家の権威を根こそぎ削ぎ落としてくださる事でしょう!

 期待しておりますわ、ハイル様!


「……そして、このデートでわたくしは……」


 残念出番がございません。

 まあ、ここまでくるとわたくし、キャロラインの悪行の数々はハイル様の知るところとなり、ハイル様は卒業までの間に裏どりを行い、証拠を集め、わたくしを追い詰める準備を進めるのですわ。

 その集大成が卒・業・パー・ティー! ですわ!

 ヒロインを虐め続けた悪役令嬢が、パーティーの中で婚約者であったハイル王子に悪行の数々を白日の下に晒され、追い詰められる!

 そしてプレイヤーはハイル様に寄り添い、わたくし、キャロラインはハイル様に婚約破棄を申しつけられます!


「クライマックスですわね!」


 …………ええ、クライマックスですわ。

 婚約破棄を言い渡されたわたくしは、逆上して去ろうとするハイル様を、そしてプレイヤーさんを亡き者にせんと襲い掛かるのです。

 そこをプレイヤーさんが積み重ねたPSで返り討ちにするのですわ。


「……………………」



 これが、のエンディング。



「…………という事は、わたくしが悪役令嬢として活躍するのは実戦訓練の時までですのね。まあ、大きなイベントはこのくらいで、あとはプレイヤーさんを見かけたらとにかくここに書いてある事を実戦する……という感じでしょうか?けれど、全体的に極悪非道ですわ……。上手くできるでしょうか……? い、いいえ、弱気になってはいけませんわ、キャロライン! 全てはハイル様の為! ファイト! いっぱーつ! ですわ!」


 ……なんか違う気がいたしましたけど……わたくし、頑張るのですわ!

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