第5話ですわ!
「ハイル様に一週間は絶対安静にしろと命じられてしまったのですが……スモールヒールをかけて頂いたので怪我自体はほとんど治ってしまったのですわよね。一週間のお休み、なにを致しましょうか……」
改めまして、わたくしキャロライン・インヴァーでございますわ。
なんとこの国の国王より権威を持ってしまった、インヴァー公爵家の一人娘ですの。
現在は自宅のお部屋で朝陽を眺めておりますわ。
後頭部の頭痛はだいぶ治りましたけれど……。
「……やはり、変ですわね……」
でも、この世界がVRMMORPG『ディスティニー・カルマ・オンライン』であり、わたくしキャロライン・インヴァーがそのNPCであるという事は分かりますわ。
でも、それをなぜ知っているのか。
そして
でも、それでは辻褄が合わないですし?
わたくしはなぜこの世界がゲームの世界だと知っているのでしょうか?
そしてなぜNPCなのに、こうして自分の意思で死を受け入れようとしているのでしょうか?
ああ、いえ……死を受け入れる事はもういいのです。
お祖父様とお父様のせいでこの国は王国ではなくもはや公国のようになっていますもの。
王家に権威を戻す為にも……ハイル様が立派な国王として君臨してゆく為にも、わたくしはいなくなった方がきっと良いのですわ。
それに、このゲームのストーリー的にもNPC一人死んだところでプレイヤーに影響はない。
そういうものなのですわ。
「…………」
うーん?
それとも……今回の
だとしたら、ある意味無駄な抵抗などせずこのままストーリーに沿うべき……ですわよね?
わたくしはもしかしてバグ?
メンテナンスをされたら戻るのでしょうか?
よく分かりませんわ。
しばらく様子を見てみるのも手かもしれませんわね。
けれど…………。
「もしもそうでなかったら……わたくしは……」
ただ——殺されるだけの……。
「っ……? ……ええと、なにを考えていたのでしたか…………あ、そうですわ! やはりハイル様に嫌われるぐらいの悪役令嬢を演じましょう!」
ですわ!
もしも今のわたくしがただのバグであっても、
今はハイル様に今回の
これですわ!
「ええ! そうと決まれば……」
お部屋のお勉強机から一冊のノートを取り出します。
これに今後の計画を書いて、綿密かつ悪質な虐めをヒロインに行うのですわ!
できればバレたら一発でハイル様に嫌われるような!
そんな虐めが好ましいですわね!
昨日の『生卵流星群』攻撃はあまり効果がなかったようですし、やはり食べ物を粗末に扱うのはゲームの中とはいえ良い事とは言えませんわよね。
えっと…………そうなると、どんな事をしたらイジメになるのでしょうか?
イジメ……イジメといえば……ええと、無視……とか、でしょうか?
①無視
あとは……悪口でしょうか?
②悪口を言う
「…………? 悪口を言ったら無視にはならない気がするのですが……」
この矛盾はいかがしたら良いのですか?
悩ましい問題ですわ。
ああ、それに、昨日のように他の皆さんに協力して頂くのはやはりやめた方が良いでしょうね。
わたくしが皆さんに悪い事を強要したとなれば、きっと皆さんにわたくしがとっても悪い女で、ハイル様の妻には到底相応しくない……と思って頂けると思ったのですが……やっぱり心苦しいですもの。
ゲームの中ではお友達のご令嬢と一緒に
ゲームの中のわたくしを参考にすれば良いのですわ!
幸いに、ストーリーは覚えております。
ん? 覚えて……?
うーん、思い出そうとするとまたぼんやりしてきますわ?
これは一体なんなのでしょう?
「……んんっ! そうですわ、顔を洗いましょう!」
そのタイミングで、部屋の扉がノックされる。
侍女の侍女Aが入って来ましたわ。
「……………………」
「おはようございます、お嬢様。お加減はいかがでしょうか?」
「……………………」
「? お嬢様?」
……め、目が、目が侍女Aの頭のカーソルに釘付けですわ!?
そのカーソルの上にはネーム……『侍女A』とはっきり書いてあります!
やはりここはゲームの世界!
って、ち、違いますわ!
なんですの、これ!
いくらゲームの世界とはいえこの扱いは酷すぎますわ!
あら? 昨日の同級生の皆様にも頭の上にカーソルとネームがあったのでしょうか?
ヒロインに卵をぶつける事しか頭になくて、よく覚えておりませんわ……。
け、けれど! わたくしの侍女ですのに名前が『侍女A』だなんて……そんなのなんか嫌ですわ!
「あの、そういえば貴女の名前を聞いておりませんでしたわね!」
「はい? 私の名前ですか? 侍女Aでございます」
ち、違うんですわーーーー!
そういう答えを求めているのではないのですわ〜〜〜!
一体どうなっているんですのーーー!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます