第4話ですわ!
「ふふふふふ……」
「「ひ、ひぃ!?」」
な、なぜ笑いますの!?
まさか、怒らせすぎてしまいましたか!?
ひ、ひえ、ご、ごめんなさ……あ、いえ、わたくしはハイル様に嫌われるほど嫌な女にならなければいけないので、このぐらいの事で逃げ腰になっている場合ではないのですわ!
「うっ!」
「! キャリー、無理をするな!」
「い、え、わたくしは……」
立ち向かわなければ。
これはチャンスですわ!
ハイル様に嫌われるチャンス……なのに……後頭部がズキズキしてきましたわ……。
大丈夫だと思いましたのに〜。
「キャリー様? この生卵の流星群は貴女様が?」
「なに? 君はなにを言っている? キャリーがこの騒ぎを指示したとでも……というか君、着替えてきた方がいいんじゃないか……?」
「あわ、あわわわわ……」
ぴちゃ、ぴちゃ……ぼた、ぼた……。
頭から黄身が落ちる。
赤い髪のおかげで黄身が映えるといいますか……!
思わずハイル様にしがみついてしまいましたわ!
だって、こ、怖いですわ〜〜!
「ち、近づくな!」
「素晴らしかったです!」
「!?」
ハイル様がわたくしを支えたまま後退りされます。
デロデロの彼女は一歩、わたくしたちに近づき、なぜかとても嬉しそう。
「でも、できればもっと罵倒のようなものが欲しかったですね〜。それから、私のご主人様になるのでしたらもっとこう、ご自身で来て頂けた方が興奮します〜」
「……………………。…………なんて?」
「ですから〜、キャリー様が私のご主人様になるのでしたら、もっとこう、良い感じにご自分で殴ってきてくださらないと! でないと興奮できません!」
「なんて?」
ハイル様が再度聞き返す。
わ、わたくしにもヒロインがなにを仰っているのか……よく、意味が分かりませんわ。
「あ、それかこれでも良いですよ?」
「!?」
「? それは? ロープですか?」
ごそごそとアイテムボックスから取り出したのは赤いロープですわ。
なぜこの方はここで赤いロープをお持ちになられたのかしら?
わたくしが首を傾げますと、ハイル様がふるふると震え始めました。
ハイル様には、ロープの意味がお分かりになられたのでしょうか?
「き、き、きみ……君は……! こ、ここは神聖なる王立学院だぞ!? それに、ここに来るという事は君もまた貴族の端くれだろう!?」
「まあ! このロープの意味が分かる貴族が他にもいるなんて! でも、分からないお顔のキャリー様の方が……はぁはぁ……興奮します……!」
「こっ、このっ……!」
「?」
ハイル様とヒロインの出会いのシーン……の、はずなのだけれど……こんな感じでしたでしょうか?
なんか違うような?
うっ、またズキズキ頭が痛み始めましたわ……じんわりと、頭全体に痛みが広がるような……。
「っ……」
「! 大丈夫か? キャリー。医務室へ行こう」
「は、はい、申し訳ございませんハイル様……お手間をおかけして……」
「気にする必要はない。俺と君の仲だろう?」
「…………」
ええ、そうですわね。
ハイル様にとって、わたくしは王位に就く為の後ろ盾。
この優しさもきっと……。
「きゃ!」
ハイル様がわたくしの体を横抱きにして持ち上げる。
な、なんというお力強さ……!
お姫様抱っこ、ですわね!
あ、ああ……こんな、は、恥ずかしいですわ……!
恥ずかしいけれど、とても、とても嬉しいっ!
ハイル様がわたくしの事をどう思っているのかは分かりませんが、少なくともわたくしはハイル様の事が……やはり好きなのです。
だからこんな風に優しくされると……結局は喜んでしまうのですわ。
「待って! 私、エルミー・ミュリーア!」
「……!」
赤い髪に卵の黄身を載せ、わたくしに向かって手を振る少女のアバター。
エルミー、ミューリア……。
それがあのプレイヤーのネームなのですわね。
「っ!」
「キャリー!?」
「だ、大丈夫ですわ」
痛い。
一瞬だけど、とても!
今の頭痛は一体……。
「キャリー様! また虐めてくださいねー!」
そんな風に叫ぶエルミー。
そんな、虐めてくださいだなんて……。
「……っち……なんだあの無礼な娘はっ!」
「……ハイル様……」
「キャリー、あんな下品な娘に二度と近付いてはならないぞ!」
「あ、えっと……は、はい……」
ハイル様が珍しく感情を剥き出しにしておられますわ。
やはりヒロインは特別なんですわね。
それに比べて、わたくしときたら……。
当初の予定のように、ヒロインを泣かせる事もできませんでしたわ。
これでは立派な悪役令嬢になって、ハイル様にヒロインと幸せになって頂く計画が………………いいえ、まだ諦めるのは早いですわ!
わたくし、もっと悪役を勉強しますわ!
そして立派な悪役令嬢となって、ざまぁされて大人しくこの世を去るのです!
ええ、まだ一日目ですもの、諦めるのは早いですわよね!
「ハ、ハイル様! わたくし明日も頑張りますわ!」
「いいから君はまず怪我を治す事を最優先にしろ。まったく、いくら後頭部で、髪のおかげで傷が隠れるといってもなかなかの重傷だったんだぞ。……本当なら今日休むだろうと思っていたのに……無理するなと言っただろう!」
「あ、あう……す、すみません……でも……」
「ダメだ! 医務室で少し休んだらもう帰れ! 安定するまで休む事! いいな!?」
「あ…………あうぅ……」
ハイル様に叱られてしまいましたわ……。
仕方ありません。
今日の事でわたくしは色々勉強不足だと分かりましたし、一週間ほどお休みして勉強したり準備を致しましょう!
わたくし頑張りますわ!
ハイル様の幸せの為に!
えい、えい、おー! ですわ!
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