第3話 異世界【グルカルト】

 目が醒めると当然ながら場所が変わっていた。

 辺りをそっと見渡すとまるで西洋の大聖堂のようにも見える。


 …敢えて無視していたがなんか体が重たいし精神系のナニカ受けてるなコレ。

【スキル威圧耐性LV1を獲得しました】

【スキル魅了耐性LV1を獲得しました】

【スキル重圧耐性LV1を獲得しました】


 加えて脳内には変なログが流れるし。ただそれだけでも少しばかり楽になる。


 楽になったおかげか周囲をよく見渡すことができる。俺の周囲には9人の俺と同い年くらいの男女が転がってる。10歳くらいの男女10人って偶然か?


 そんな愚考をしていると周囲の全員が目を覚ましたのか全員が立ち上がるのでそれに合わせて俺も立ち上がる。この人たち俺が言うのは可笑しいが凄い精神力してない?

「此処は?」

 何故か忍者のような格好をしている少年が呟く。居たんだ忍者。

「さあ大気中の成分から見るに地球ではないね」

 と隣にいた白衣を着た少女が言う。その言葉は違和感でしかないのですが。呼吸で分かるものなのかソレって?

「その発言っておかしくないの?」

 ちょっと離れた位置に居た薙刀用の道着を着た少女がツッコム。えっナニ全員が全員おかしくない。薙刀少女(仮)の隣には剣道着の少年だし。そしてその横には弓道少女。いや何でそんな偏りが?

 それになぜかこの場で唯一武器らしい武器である斧を持つ少年。なんでそんな斧を持つのが様になっているんですかね。その上に十二単衣なんか始めて見たよ。

 まあ後は普通だろ。ゴスロリ美少女とガンマン風の少年なんてコスプレじゃなくても居るだろ多分。


 そんな事言うと俺も今は可笑しいよな。墓石を掃除する用の格好だし。


 なんとなくこの場に居る全員が引いているのが分かる。いや神様よ何故この格好の俺を…というか何故に俺を召喚したんだ?使用人なの俺?


 この空気を変えたのは俺たちの対面側に居た女性だった。

 白亜の十字架にその上に居る女神。よく見ればこの部屋全体に神々と思わしき像がある。それらに祈りを捧げていたと思わしき彼女は司祭服を見に纏っている。黒髪黒目。そして薄肌色の肌。多分転移した日本人の子孫なのだろう。その神々しさに思わず見惚れた。

「ようこそいらっしゃいました。救世の【勇者】様方」

 そして凛とした声音でその言葉を紡いだ。


 今の唇の動きって日本語じゃないな。


「どう言う意味だ?」

 尋ねたのは斧を持つ少年。ただし若干腰を落として何かあればすぐに彼女の首を刈り取れそうだがそれは多分できないだろう。

「この世界【グルカルト】は現状【魔王】軍によって我々が住むこの世界を支配しようとしています」

 テンプレだな。でもこの女性ならば一騎当千の働きができるはずだ。そう俺の本能が告げている。

「それは貴女たちの都合であってなんで外部の私たちを使うの?」

 白衣の少女が半歩体を出し尋ねる。

「全ては偉大なる神々の意思です」

「生憎と私は無神論者なの。それに今回が特異例だとしても何でそんな連中を滅ぼさないの?」

 そんな気はしていた。というかこの娘って商人かなにかか?

「それは不可能です。【魔王】は一定周期で復活するようになっているからです」

 何処かの太陽神や死の行進曲かよ。封印じゃダメなんだろ。

「はあ。なら仕方ないわ。じゃあどうやったら帰れるの?」

「それはー」

「言っとくけど魔王の書庫にあるとか魔王を倒したら自動的に帰れるとかそう言う類は無しね」

 大抵の異世界モノである話だな。色々と怖いな。相手に回したくないタイプだ。というか白衣の下から覗かせる紫色の毒々しい液体が入った試験管の存在が怖いわ。

「あとふざけた回答するなら今の私の手持の薬品で此処にいる全員殺すわ」

 あれそんな強烈って俺も殺されるのかそれって?

「大丈夫。この【勇者】召喚陣は神々にしか行使できないとされているわ」

「つまり逆もまた然りというわけね」

「ならなんでその神々とやらは【魔王】という存在を放っている?」

 今度は斧の少年が問い詰める。まあそこは俺も疑問に思うが答えは限られるだろう。

「【魔王】側にも神々と同じ【邪神】が存在して【神界】規定で神による直接の下界への干渉が禁じられているからです」

 そうだと思った。にしても【邪神】を殺せと言われないよな?

「まさかその【邪神】を殺せとか言わないよな?」

 いつの間にかボウガンを構えていたガンマン風の少年が釘を差す。ええっと何このカオス。

「いえ」

 ふぅ。ようやく落ち着いたと思った瞬間だった。

「チッ!」

 背後から放たれた矢を持っていた箒で弾く。その突然の行動にこの場に居た全員が驚く。

「距離30角度40方向真っ直ぐ」

「?!助かるぜ!」

 俺が勘で察知したソレを告げるとボウガンの少年はすぐさまその方向を射撃する。その勘は桜井家にて鍛えられた強靭なもの。また彼の腕もいいのかすぐにぐしゃりとボルトが突き刺さる音がする。

【スキル危険察知LV1を取得しました】

【スキル気配察知LV1を取得しました】


 おう。まあ良いか。そう思っているとボトリとその死体が落ちてくる。それに対して何故かこの言葉が思い浮かんだ。

「ドッペルゲンガー?」

【スキル鑑定LV1を取得しました】

【スキル看破LV1を取得しました】

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