第35話

「えっ?マジ?まじ?」


 十朱君が真っ赤になって、身動ぎながら言った。


「マジまじ」


 伊能君が少し声を低くして答えるが、決して低くならなくて心地よい声音だ。下手をすれば女子より、心地よいかもしれない。


「方角みたいな名前の彼女、どっちが好きだったのかなぁ?」


「え?」


 伊能君は抱きついたまま、十朱君の赤く熱を持つ耳元で、囁く様に言った。


「双子の兄弟の兄?弟?」


「そんなの……???」


「ねぇ、俺さ、ずっと気になっててさ、十朱知ってる?」


 伊能君はその見惚れる程の、美形の顔容を覗かせて、十朱君に聞いた。

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