第34話

「うふ……とにかくこっちにお出でよ十朱


 伊能君はめいっぱい可愛く微笑むと、自分の隣を叩いて言った。


「……えっ?」


 伊能君は〝こっちこっち〟と言って、フローリングを叩いて言った。

 十朱君は机に鞄を置くと、それは行儀良く伊能君の隣に腰を落とした。


「十朱って彼女いないよねー?」


「あーうん。どうして?」


「だって、彼女いたら……」


 伊能君は十朱君の真向かいに躰を動かして、そしてギュッと抱きしめた。

 吃驚して身動ぐ十朱君に


「こんな事したら、叱られちゃうだろう?」


 と笑いながら言った。

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