第32話

「えっ?えええ???」


 十朱君は、挙動不審に驚いて見せる。


「はっ?ダメ?」


 伊能君はその涼やかで黒目がちな瞳を、キラキラと輝かせて言った。


「だ、駄目じゃないよぉ〜」


 真っ赤になりながら十朱君は、二階にある自室に世にも綺麗な伊能君を、促しながら階段を上るが、ドキドキとときめいて、苦しいくらいだ。

 そんなときめきを覚えながらも、伊能君の噂が脳裏を過る。


 ……伊能君によからぬ事をしようとしたグループは鬼に喰われ、伊能君を陥れようとしたグループは異界で孕ませられ、伊能君を虐めようとしたグループは……


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