第31話

 最寄りの駅から10分程度、閑静な住宅街に十朱君の家がある。

 此処は10年程前に、十数軒一斉に売りに出された住宅街だ。だから似通った家が建ち並んでいて、変わり者の伊能君にはどれも同じ家にしか見えない様で


「皆んな同じだねー」


 と言った。外壁の色とか外壁とか、家の作りだって違っているのに……。


「入って入って……」


 建ち並ぶ家の数軒目の家に入りながら、十朱君は伊能君を促した。


「へぇー此処?なかなか綺麗だね」


「そうかなぁ?母親が案外几帳面だからね」


「ふ〜ん?……その母親は?仕事?」


「いや、仕事してないよ。買い物かなぁ?」


 伊能君はリビングを睨めますと


「十朱の部屋ってどこ?」


 と聞いて来た。


「えっ?二階だよ」


「……じゃ、二階行きたい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る