第2話
ゲームジャンルで言えば、このゲームは『育成シミュレーション』だ。
ほぼ自給自足の生活を送りながら少女を成長させ、また、一軒家から村に発展させる。というのがメインストーリーとなる。
少女と村という二つの育成の中で、メインとなるのは少女の成長だ。
ゲームはマルチエンディング方式を取っていて、一定期間が経過すると少女の将来が決定する。ゲーム紹介に書かれていた情報によると、少女が旅立っていったり、狩人になったり農家になったりするらしい。
どの将来を選ぶかは、それまでの行動次第。
小屋の隣に作ってある畑での作業ばかりやらせていれば農家に、農作業をさせずに、狩りにばかり連れていけば狩人になる可能性が高い。ということだ。あくまで可能性なのは作業を行った回数ではなく、作業の結果上がったパラメータで決まるからだと言う。
少女のエンディングを見終わっても、それで村がなくなるわけではない。
そこからは延々と村の運営だけを遊ぶことも出来る。
ただし、少女の仕事は決まってしまうので、違う仕事を指示したりとかは出来なくなる。
と、いうのがゲーム紹介で書かれていた説明だった。
間近から俺を見上げる少女が「私は何をするの」と言っている。ぶかぶかのシャツを着ているのは、俺のシャツを貸したということなんだろうか。
かわいい。
俺との身長差は大きく、少女の頭は俺の胸くらいの位置にある。
いや、少女じゃない、リーフだ。リープの頭の上にポップアップした表示でそれを思い出す。名前を付けたんだ、名前で呼ぶようにしよう。
リーフの周りにはリーフの体調やステータスが書かれたウィンドウがいくつも浮かぶ、少し離れた
決して、上目遣いが可愛かったからそのままにしてずっと見上げてもらいたいとかそんな理由ではない。
リビングなのか、それともダイニングキッチンと言ったほうがいいのか。大きな丸太を半分に割って横向きに置いたようなテーブルに、切り株そのものの椅子、部屋の隅には石造りの
一つの扉を開けてみると、粗末なベッドのある部屋だ。寝室ということだろう。その部屋にはベッドの他に剣や弓、斧、あとは
もう一つの扉も寝室だった。こちらはベッドがあるだけで、剣も弓も置いていない。こっちはリーフの寝室だろうか。拾ってきてすぐに寝室が出来るとかどういうことかと憤りを感じなくはないが、ゲーム的なご都合主義だろう。
別に一緒に寝たいとか考えたわけではない。
最後の扉は小屋の外につながっていた。
扉を開ければ青空は見えるものの、ロックが掛かっていて外に出ることが出来ない。扉が開いているのに足を踏み出せない理不尽。
外を見て回るにはもう少し進めないとダメか。
外に出るのを諦めて振り返る。そこには小屋の中を見て回っている間、ずっと後ろをついてきていたリーフが上目遣いで見つめていた。
とてもかわいい。
武器も農具もあるということは、道具を作らないと何も出来ないというほどにはサバイバルではないらしい。収納棚に入ってる食べ物は消耗品だとは思うが、何か物作りで使う消耗品なのか、日々の食事で消えていくものなのかはよく分からない。とりあえず、出来る作業を一通りやってみようか。
改めてリーフを見る。
かわいい。
今はまだ子供らしい可愛さだが、成長してくれば美しさを兼ね備えた可愛さに進化することだろう。
リーフの周囲にうかんだウィンドウの中から、行動選択のウィンドウを探す。
『伐採』
『畑仕事』
『狩り』
『家事』
『読書』
今やれる作業は五つのようだ。
どれからやろうか。一通りはやってみたいが、と思いながらちらりとリーフを見る。
小さい。
この体格で伐採とか狩りとかどうなんだと思う。草むしりなら出来るだろうが、伐採と書いてあるということは木を切るんだろう。寝室に斧は置いてあったが、どう見ても大人向けの大きさだ。リーフの体格では振ることは出来ないだろう。
子供向けの斧というのもどうだという気はするが。何度やれば切れるのか分からないという意味で。
そうなると選択出来るのは畑仕事、家事全般、読書の三つ。
となれば、まずは食べ物の確保だろう。俺は『畑仕事』を選んだ。ピコンと音が鳴ってウィンドウが閉じる。
「わかった。『畑仕事』をします。ロックはどうするの?」
リーフの言葉で再びウィンドウが開く。選択肢はついさっきと同じ五つ。
これは俺とリーフで別々に作業を選択出来るということか。でも、まあ初めての作業で一人ぼっちというのもなんだろう。俺は再び『畑仕事』を選択する。
ピコンと音が鳴ってウィンドウが閉じると、視界がフェードアウトして景色が切り替わる。
外だ。
目の前には狭いながらも畑がある。そのすぐ隣にある建物は、いままで居た小屋だろうか。手には
……なんでだ?
オーバーオール姿もカワイイは可愛いんだが、その服と
視界に赤で『サポートに従って畑を耕して下さい』という文字がオーバーラップする。
見ると畑の何も植えられていない一角を、赤い矢印が差している。
ここを耕せということか。
振りかぶった鍬を矢印の場所に突き立てる。矢印が少しずれた位置に移動する。新しい位置に鍬を突き立てる。矢印がまた移動する。
俺が土を掘り起こしている隣で、リーフも鍬を振りかぶって土を掘り起こしている。振りかぶったときに、ちょっとふらふらしていて怖い。
矢印通りに鍬を振るっているとすぐに畑の端につく。元々が小屋と同じくらいの面積しかない小さな畑だ、すぐに端まで行ってしまう。
そうすると今度は視界にオーバーラップした文字が『種をまいて下さい』に変わる。同時に手に持っていた鍬が消えて、代わりに手には小さな袋を持っている。
なんか
また矢印が出ているので、それに合わせて袋の中に入っている種をまいていく。
俺が種をまいている隣で、リーフも種をまき始める。今度は重いものを持っているわけではないから、ふらふらすることもない。安心して見ていられる。
かわいい。
種まきをしながら歩くと、やはりすぐに畑の端まできてしまう。これで終わりかと思ったら、今度は『野菜を収穫して下さい』と出る。
いやいやいや、今、種をまいたところでしょうがと思ったら、矢印は少し離れた場所を差していた。そこは畑の別の一角で、既に育っている野菜がある。
矢印の指示するままに畑の上に鎮座しているキャベツと玉ねぎを取っていく。
隣のリーフは大きなキャベツを持ち上げては尻もちをついていた。
かわいい。
ポポポーンと音がして「畑仕事が終了しました」というアナウンスが流れる。
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