第658話 精鋭/瑠璃子

エリシア帝国の攻撃隊は、良質ではあるが強敵ではなかった。クラス全員がラドルの新技術によるパワーアップでかなり強化されていることもあるが、魔道機の性能の差も大きかった。


たとえば、クラスの中でも特に戦闘力の低い山城美幸さんでも、搭乗する魔道機、”神兵”の誇る強装甲と、爆炎石を利用した銃兵器のインフェルノキャノンによる火力のおかげで、敵を圧倒していた。彼女は操縦やルーディア値も未熟で、他の生徒たちにくらべてかなり劣る存在だけど、この戦場では無双状態と言えるほどの強さを発揮している。


さらに七機の新型機は異次元の強さを誇った。神兵の強化版とくらいしか考えていなかったけど、あきらかにその性能は量産機を凌駕している。


新型機は”神騎”のコードネームで呼ばれ、神兵の完全上位互換であった。強力な装甲はさらに強化され、出力も機動力も大幅にアップしている。武器は共通して槍を持ち、その槍はルーンと名付けられており、接近攻撃はもちろんのこと高出力の熱線を発射できる万能武器であった。


神騎に乗るライダーの一人である岩波蓮くんは、機体との相性がいいのか七人の中でも抜きんでる活躍をしていた。素早い動きに敵機を一撃で葬る攻撃力、さらに近接、遠距離武器の使い分け、状況の判断、戦術的に読み解きながら行動するのは、サッカー部の活動で培われたものかもしれない。


また、神騎ライダーの一人である木山鉄平くんの戦闘技術は凄い。なにやらこの世界で剣術を正式に習ったようで、他の生徒たちと戦い方が根本から違った。頼もしいかぎりではあるけど、どうも神騎との相性、いやルーンとの相性が悪いのか本領を出し切れないようにも見える。慣れてくればもっと強くなりそうだった。


他の生徒たちも二人一組で戦ったり、五人組で集団戦を乗り切っている。なにしろ魔道機の性能が良いので、適当に戦っても無双できていた。


そんな圧倒的にこちらが優勢の状況に、新たな敵軍が介入してきた。ちょっとした精鋭なのか、雰囲気が今までと少し違った。


その精鋭部隊には神騎のライダーである堀部直志くんと今村明音さんが対応した。そんな二人から緊急での通信がくる。


「先生! この部隊は十軍神直属部隊です! もしかしたらレイナの部隊かもしれません」

「そう、それではその部隊は私が受け持ちましょう」

「先生一人で対応するのですか」

「まあ、問題ありません。私にはこのサターンがありますから」


私の乗るサターンは神兵や神騎とは違うラドル・ベガが直接設計開発した完全オーダーメイドの指揮官機だ。戦闘力は他の魔導機とは次元が違う。


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