第659話 悪魔/瑠璃子
戦闘を続ければ続けるほど、悪魔からの声が大きくなる。殺せ! 殺せと頭に響く。同時に妙な高揚感が思考に靄をはり、自我が薄れていくのがわかる。こうなるともう戦闘を簡単には止められなくなる。しかし、レイナさんがいるかもしれないのに、完全に自我を失うわけにはいかない。私は辛うじて自分が自分であることを保ちながら戦った。
レイナさんの機体と思われる機体はほどなくして見つけた。赤い派手なカラー、それに胸に二匹の蝶の模様、間違いない、あれはレイナさんの乗る魔導機だと確信した。
すぐにその赤い魔導機に接近する。しかし、その赤い魔導機は敵軍の司令官機、簡単に接近などできるわけなかった。すぐに重装騎士みたいな魔導機が間に入って邪魔をする。
「生徒に近づくのを邪魔しないで!!!」
右手から接近してきた騎士魔導機の首をはねる。さらに軽いステップで間合いを詰めると、左手の騎士魔導機の頭を掴んで引きちぎった。
そのまま移動しながら剣を振り、三機目、四機目と斬り伏せながらレイナさんの機体に近づく。勇気のあることに敵は怯むことなく私に襲いかかってくる。その鬱陶しさに、思わず強力な魔導撃を発動してしまった。
「影覇王!!」
サターンの魔力ゲージが一気に減る。そしてその対価として周りに五つの黒い影を生んだ。その影は龍の姿となり、うねるように空に飛びあがり、急降下しながら敵へと襲い掛かった。
影の龍は敵を粉砕しながら周りを一掃していく。そのあまりにも一方的な暴力に恐怖を感じる。それは敵への哀れではなく、レイナさんまで巻き込んでしまいそうで、単純にそのことが怖かったのだ。しかし、レイナさんはそれほど弱い子ではなかった。影の龍が暴れまわる中、彼女は縦横無尽に回避している。そんな彼女に、影の龍が消えたタイミングで近づき、こう話しかけた。
「レイナさん! 聞こえますか、担任の南です」
一瞬、赤い魔導機の動きが止まる。そして一呼吸おいて返事がきた。
「南先生ですか? ほんとに?! いや、それよりどうしてこの魔導機に乗っているのが私だってわかったんですか」
「ラドルの情報収集能力は世界一ですから。それより、レイナさん、私たちはすでに、ほとんどのクラスメイトたちが集合しています。貴方もすぐにこちらへ合流してください。ラドルは私たちを元の世界へ帰してくれることを約束しています」
「……その話、本当ですか?」
「本当です。また全員が揃っていませんのですぐに帰るとはいきませんが、全員が揃えば、すぐにでも日本へと帰ることができるのです」
「まだ揃っているないメンバーって誰ですか」
「結衣さん、勇太くん、渚さんです」
「そうですか……わかりました。私にとっても悪い話じゃありません。しかし、今のエリシア帝国を裏切るにはリスクがあります。胸に凶悪な束縛する宝石を埋め込まれているんです。裏切ればこの宝石が私を殺します」
「そう、しかし、安心してください。ラドルの科学力はこの世界で一番です。
そのラドルの力ならそんな物すぐに取り除けるでしょう」
そう言うと安心したのか、素直に合流することを約束してくれた。
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