第656話 くじ引き/瑠璃子

本部から七体の新しい機体が送られてきた。これまで使ってきた機体の性能を遥かに超えるものだそうだけど、それだけ多くの精神が削られそうだ。そんな危険で強力な機体を誰に乗ってもらうか悩んだ。


実力順でいけば榊春馬くんと岩波蓮は決まりとして、後は五人……木山鉄平くん、御影守くん、堀部直志くんと、あとは今村明音さんくらいかしら、残りの一枠はくじ引きで決めてもいいかもしれない。誰にでもチャンスくらいは与えないと不公平になる。


「南先生、ここから南東にあるラドル枢軸連合の基地が、エリシア帝国軍に攻撃させているので救援に向かってくれと要請がありましたけど、どうしますか?」

「エリシア帝国……どこの軍ですか! もしかして結衣さんかレイナさんの軍じゃありませんか!?」

「いえ、十軍神直属部隊のようですが、司令官の名はアージェインとのことです」

「そう……ならばそんな要請断ってください。今は別作戦中で忙しいとでも言えばいいでしょう」


ようやくクラスのほとんどのメンバーを集めることができていた。残るは結衣さん、レイナさん、渚さん、勇太くんの四人……結衣さんとレイナさんはエリシア帝国の十軍神として情報があるけど、渚さんと勇太くんは無双鉄騎団という組織に属しているということ以外、何もわかっていない。でも、おかしな話だ。これだけあらゆる情報つかんでいるラドル枢軸連合の諜報部が、たかが傭兵団一つの足取りもつかめないものだろうか……もしかして、本部は私に何か隠しているのではないのか……。


「ちょっと待ってください! どうやらさきほどの基地の攻撃ですが、エリシア帝国軍に大規模な援軍が向かっているとの情報があるそうです。その援軍の中にはレイナの名もあるそうです!」


「ほんとうですか! わかりました。すぐに救援に向かうと伝えてください」


情報から大規模な軍との戦闘が予想される。レイナさんを救出することも考えると、この戦いに新型機を投入したい、そう思い、すぐにみんなをブリッジに集めた。


「本部から強力な機体が七体、送られてきました。これをみんなの中の誰かに操ってもらいたいと思います」

「先生! 俺に載せさせてくれ! 機体が良くなれば俺の戦闘力は格段に上がるはずなんだ!」


そう主張する原西くんだけど、ニトロルーディアでもルーディア値の上昇値は低く、正直、見込みがないと私は評価していた。くじ引きでの機会は与えるつもりだけど、指名するには実力不足だ。


「六名の人選はもう決めています。残り一枠はくじ引きで決めようと思うのですがどうでしょうか」


原西くんは人選で自分が選ばれると確信しているのか、異論は唱えなかった。実際、そのあと、人選を発表した後は、あからさまに元気をなくしていた。


そして、おこなった、くじ引きで最後の一枠に決まったのは大場咲良さんだった。実力では原西くんと大差ないけど、彼より期待値はあると思う。結果的には悪くない結果になったと思う。

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