第655話 突破完了/ジャン

マウユのアルヴィオンは艦隊の進行より少しだけ早く飛行して前に出ると、重装魔道機隊に近づいて行った。


上空に巨大な物体が現れたことにより、敵重装魔道機隊は少し慌てているようだ。わらわらと重い機体を動かしてマウユのアルヴィオンの攻撃に備える。


「全部いなくなっちゃえ!」


マウユがそう叫んだ瞬間、アルヴィオンから無数の光の線が、噴き上げる噴水の水のように敵重装魔道機隊に降り注ぐ。重装備の魔導機は分厚い装甲で防御力の高い機体が多い。それを自負しているのか避けようとせず、守りを固めてそれを耐えようとした。しかし、この自信が破滅をもたらす。アルヴィオンの拡散レーザーは、重装魔道機の分厚い装甲をたやすく貫き、コアを破壊した。敵重装魔道機隊に無数の爆発が生まれる。


その一撃は戦場全体に影響を与えた。敵軍は狼狽え、味方は歓喜に沸いた。一気に雰囲気がこちらよりに変わった。


「よし、全軍速度をあげるぞ! フガクはロルゴ隊を回収してくれ!」


最大速度には、重いロルゴ隊はついてこれない。全体の防御力は弱まるが、ここはいたしかたなかった。この流れを逃すのは愚策でしかない。


包囲を抜け出す瞬間が一番危険ではあった。そうはさせまいと敵も集まってくる。さらに激化する突破作戦だが、それでも終わりは近づいていた。


「全軍、密集隊形! 最後の敵陣を突破するぞ!」


本隊は一塊となり、最終ラインの敵陣に突っ込む。機動部隊やマウユにボコボコにやられている敵軍にもはやそれを止める力はなかった。無理やりこじ開けるように本隊は敵軍を押しのけて徐々に包囲を抜けていった。


「よし、このまま戦場を離脱する。機動部隊はしばらく追撃を注意してくれ、北の山脈を超えればひとまず安心だろ。そこで陽動部隊と合流する」


敵の大きな包囲は抜け出すことに成功したが、それでもこの辺りは敵の勢力圏である。敵軍からの攻撃の危険が完全になくなることはない。さらに包囲から追撃部隊がくることも考えられた。


包囲を抜け出せたことで陽動部隊に作戦の終了を伝える。この時点で陽動部隊はまだ包囲内にいるが、正直なにも心配はしていなかった。おそらくしれっと全員合流地点までやってくるだろう。


陽動部隊の心配はしなくていいとして、本隊をどうするかだ。北の山脈を超えるルートは険しすぎて直進で進むのは難しい。迂回していく必要があるが、追ってくる敵軍を考えればあえて険しい道を進むのも手かもしれないな……さて、どうするか……。


「敵の追っては確認できるか?」

「いくつかの敵影は確認できますが、本格的に追撃してきそうな部隊はありません」

「よし、それでは迂回して北の山脈を超えるぞ。すぐにルートをスキャンしてくれ」


スキャンの結果、高低差もあまりなく、障害も少なそうなルートが見つかった。追手も振り切れそうだし、このまま合流地点までいけそうだな。


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