第653話 強行突破/ジャン
勇太たちのおかげで、随分と包囲もゆるくなった。これなら包囲から抜け出すのも可能だろう。
「陽動部隊のおかげで包囲がゆるくなった! そろそろ包囲突破作戦を開始するぞ! アリュナ、ナナミ、エミナ、アーサー、各隊は、進行方向の残った敵を退け、本隊のルートを確保してくれ。ファルマ隊はそのフォロー、ジュネージュ隊とミルティー隊、それとロルゴの隊は本隊の護衛を頼む」
号令に一番に反応したのはアリュナ隊だった。アリュナの乗るベルシーアαは赤い稲妻のように進行方向の敵に向かって走り、斬り伏せながらさらに移動を繰り返す。アリュナの部下たちもそれに続くが、アリュナのスピードには完全にはついていけず、ちょっと遅れ気味なっていた。
ナナミはアリュナとは対照的に、あまり移動せず、攻撃を仕掛けてきた敵を弾き返すように破壊する。その部下たちも隊長の戦い方に似るのかカウンターで次々と敵を倒していく。
陽動隊のおかげでまばらになっていた敵軍だが、ようやくこちらの狙いに気づいたようで、組織的に妨害する動きを見せ始めた。
北西方面から魔導機大隊が向かってきていた。このまま本隊に斬りこまれたら大幅な時間ロスになる。時間がかかればかかるだけ、敵軍の包囲に捕まる可能性があがるので、なんとか近づく前にその部隊を押しのけたかった。
「アーサー、エミナ、すまないが北西から近づく大隊を集中的に攻撃してくれるか、あれに近づかれたら厄介だ」
「任せよ! このリンネカルロ親衛隊の突撃力を見せてくれるわ!」
「任せるのはかまわないんだが、そのややこしい非公式な部隊名はやめろ」
「やめぬ!」
たくっ、しかし、困った奴だが今のアーサー隊は頼りになるのは間違いなく、突撃力の高さは剣術指南殿も評価している。瞬間的な敵部隊への打撃力で言えば、無双鉄騎団の中でも屈指の高さを持っていた。今、それを証明しようとしている。
アーサー隊は近づく敵魔道機大隊に向かって、かなり加速した状態で真正面からぶつかった。加速しているうえに、強烈な突進力のあるセントール級魔導機は、敵魔道機大隊の前衛に爆発的な衝撃を与える。その力は後ろの敵にも伝わり、連鎖的に破壊を伝達させた。
一撃で二割ほどが戦闘不能となった。あまりの破壊力に、敵魔道機大隊は混乱し、統率が乱れ始めた。そこで追撃すればさらに大ダメージを与えられるところだが、アーサー隊は乱戦に弱いという弱点があった。効果的な二撃目を与えるには一度引く必要があるのだが、敵魔道機大隊の深くまで突き刺さった突撃により、もたついていた。
そんなアーサー隊をフォローしたのが、エミナ隊であった。エミナはアーサー隊がもたつくのを予想していたのか、突撃後、混乱した敵魔道機大隊をさらに追撃し、さらなる混乱と打撃を与える。エミナ隊はステルスで潜伏しながら攻撃をするので、敵は自分たちが何から攻撃されているのかわからず、恐怖で混乱を加速させていた。
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