第650話 陽動隊

陽動の為、俺たち別動隊は先に出撃した。目指すは、本隊が包囲を突破する予定の北東側の敵部隊の中心、ここを叩いて敵軍を分散させる。


「戦い方、戦術などは各自に任せるが、開始と撤退のタイミングは合わせる。いつでも動けるように準備していてくれ」


ジャンの指示にみんな了解する。


「ジャン、攻撃の時間的にはどれくらいを想定していますか」

確かに想定の戦闘時間がわかればペース配分などを考えて戦える。そんな清音の質問に迷うことなくジャンは答えた。


「30分ほどだな、それが本隊が包囲を突破する想定時間だ」

「30分くらいなら全力で暴れても持ちそうだ」


オヤジは軽くそう言うが、普通は全力で戦闘して30分は持たない。訓練されたライダーでも、いいとこ10分が限界だと思う。


「30分もいりませんわ、10分で敵軍を半壊させてみせますわよ」


リンネカルロが乗るヴィクトゥルフはヴィクトゥルフⅡへとアップグレードしていた。恐ろしい広範囲の雷撃攻撃が追加されているって話はラフシャルから聞いているんだけど、威力に比例して強力な技には気力を使うものが多い。そんなの連発したらすぐに疲労で動けなくなりそうだけど、リンネカルロはその辺は考えているんだろうか。


「それでどうしますか、最低限の連携くらいは考えておきますか」

清音がそう提案するが、オヤジがそれを否定する。

「いや、このメンバーなら必要ないだろ。逆に変な足かせになる可能性すらある。何か不測の事態が起こったらお互いを支援するくらいの考えでいいだろ」


ジャンがこのメンバーを選んだ基準はわからないけど、俺の基準でこのメンバーを表するなら、一人、大軍のど真ん中にポイと落として、平気で生きて帰ってこれる連中と評価している。なのでオヤジの考え通り、各々好きに暴れるくらいでもいいかもしれない。


「決めごとは一つだけ、撤収の合図が出たら必ず撤退すること、撤退後の集合地点はデータで送った。遅れずにここまで引いてくれ」


「父上、必ずってことは絶対ってことですからね、何か言い訳して遅れないでくださいよ」

「ははははっ── 何を心配しておる。俺が決めごとを守らないとでも思ってるのか」

「思っています」

「勇太、何か言ってやれ、父の本質を見抜けぬ愚かな娘に」

「いや、清音が正しい、俺もオヤジがちゃんと遅れずにくるか心配だ」

「たくっ、俺の弟子二人は師匠に対する尊敬の念が足りないな」


このやり取りを聞いて、リンネカルロや渚が笑いをこらえてるのが言霊箱経緯でも伝わってきた。


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