第649話 包囲突破作戦

白雪さんはまだまだ眠りから目覚めることはなかった。フェリの話ではいつ眠りから覚めるかは個人差があるようで、いつ目覚めるかはわからないそうだ。


「勇太! 結衣は大丈夫なの!」


連絡をしていた渚が、友達を心配して駆けつけてきた。

「もう、大丈夫、だけど完全には回復していないからまだ眠ってるよ」

「そっか……よかった」


渚は友人の無事を聞いて安心したのか、へたり込むように近くにあった椅子に座りこんだ。


「ちょっと、勇太、どういう経緯でこうなったか説明しなさいよ」

「いや、俺も詳しくは知らないって、再開した時にはもうおかしくなってたんだ」

「結衣をこんな目にわせた奴、ぜったいに許さないから!」


白雪さんをこんな状態にした連中に素直な怒りを表現する渚、やっぱりこいつは友達思いだな。


それからカプセルで眠る白雪さんを俺と渚とエミナでじっと見つめるというシュールな時間を経て、包囲突破作戦の打ち合わせへと向かった。



「それでは作戦をざっと説明するぞ。意見のある奴は一通り聞いてからしてくれ」

「はい! 質問があります!」

俺が勢いよく手を上げたのは完全に無視され、ジャンの説明が始まった。


「まず、魔導機のほとんどは足の速いライドキャリアに格納する。戦闘は最小限で包囲を突破することだけを考えているので、戦うのは機動力があり、戦闘力のある魔導機隊で局地的におこなう。実際、突破作戦を行う前に別動隊が敵の一部を誘導して、包囲を弱くする。これには派手な戦闘力と、戦闘後に単独で逃げ切れるように、精鋭のみで編成する」


「はいはい! 質問!」

「たくっ、なんだ勇太、言ってみろ」

「足の遅いライドキャリアはどうするんだ、ハゴウとかモウコウとか、とろくてついてこれないんじゃないか?」

「ほう、勇太にしてはいい質問だ。足の遅いライドキャリアは、乗員を他の艦に移動させて突破時の壁として使う。残念だがそのまま置いていく予定だ」

「うわ、もったいねえ」

「確かにもったいないが、自動反撃システムを仕掛けて置いていくから、最後まで敵の注意を引き、敵の戦力を削ってくれるだろ」


そのジャンの言葉を聞いてアリュナが軽く非難する。

「鬼だね、置いていくだけじゃなく、最後まで戦わせるなんて」

「でも仕方ないですわ、作戦内容から突破スピードが重要そうですし、人的被害がでるよりマシってことですわね」

リンネカルロはジャンの考えに理解を示しているようだ。確かに人が死ぬよりは随分とマシではあるだろう。どうせ置いていくなら最後まで利用するってのは正しいのかもしれない。


「他に質問はあるか?」

「具体的な編成はどうするのですか、特に別動隊は重要になると思うのですが、メンバーは決まってるのですか」

「俺の頭の中では決まってる。後は本人の意思の確認だ」

「だれとだれだよ?」

「勇太、渚、グリュニー、ダフスタル、剣術指南殿、リンネカルロに清音、それにフィスティナだな。他の指揮官クラスのメンバーは本隊の護衛だ」


予想はできていたけど、現在のうちのベストメンバーの名が挙がる。これによりジャンの思惑の全貌が理解できる。それだけ別動隊の任務は困難かつ重要だということが確定した。



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