第645話 悪意の元

白雪さんが気を失って投薬のタイミングを待ってたのだけど、なにやら白雪さんの心の中の世界に異変が起こり始めた。空の色が変化し始め、ちょっと嫌な感じになり不安になってきた。


「フェリ、なんか様子がおかしくなってきたんだけど」


そう質問したが、フェリからの反応はない。どんどん心細くなりさらに声をかえる。


「お~い、フェリ! どうしたんだ! 何が起こってるんだよ」


フェリの返事の代わりに、真っ黒な靄のようなものが目の前に出現してきた。この霧はもやもやと嫌な動きをしながら、ゆっくりと白雪さんの方へと向かう。俺の直感がこのまま黒い靄を白雪さんに近づけちゃいけないと感じた。


すぐに白雪さんを抱きかかえ、その黒い靄から逃げる為に走った。もともと白雪さんがターゲットなのか、黒い靄はとうぜんのように追いかけてくる。そのスピードはどんどん速くなり、勢いよく迫ってきた。


「フェリ!! この黒いのなんだ!! どうしたらいいか教えてくれ!」


どう言う訳かフェリには伝わらないようで、返事どころか気配すら感じない。これはやばいことになってきたと、どんどん不安になってくる。さらに不思議なことに精神世界なのになぜか息が上がってくる。疲れすら感じてきて、リアルな疲労が体を蝕んできた。


気が付けば学校まで逃げ込んでいた。黒い靄は、あきらめることなく俺たちに迫ってくる。さらにさっきより大きくなっているようで、広範囲にその不気味な黒い靄を撒き散らしていた。


「フェリ! フェリ!」

何度呼び掛けてもフェリからの返事はなかった。不測の事態に気持ちだけが焦り、冷静に判断ができなくなる。


黒い靄はあらゆる方向から迫ってきて逃げる道はない。もう、上の階に上っていくしかなかった。一階から二階へ、二階から三階へ、そして最後には屋上へと追い込まれた。


屋上でさらなる逃げ道を探していると不意にざらざらとした音声が届く。

「ゆ……ガーージジジーーゆう……ゆうた……」


どうやらノイズ交じりだがようやくフェリからメッセージが届いてきたようだ。集中してそのメッセージの内容を聞く。


「勇太、彼女の精神の中にあった腐食体が不測の変異を始めました。さらに一か所に集まって、自らを強化増殖しようとしています」


「なんだって! どうしたらいいんだフェリ!」

「あと三分で投薬を開始します。それまで彼女の精神を守ってください」

「守るったって、もう逃げ道もないんだよ! どうすりゃいいんだ!?」


「そこは精神世界ですよ。逃げ道がなければ作ればいいだけです」

「あっ、そうか、今は白雪さんと精神が繋がってる状態だから、ある程度の改変は可能なんだ」


すぐに屋上の形状を変化させるように創造する。するとさらに上へといける非常階段が現れた。


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