第647話 投与後
精神ダイブから目覚めると、エミナが涙目で待っていた。
「もう、大丈夫だって、結衣の精神が安定してきて、回復に向かってるって」
それを聞いて俺も心底安心する。
「あっ、戦況はどうなってる? みんな大丈夫なのか!」
安心すると今は戦争中だということも思い出す。みんなに戦闘をまかせっきりになっている状況に罪悪感を感じる。
「安心しろ、敵の攻撃は完全に退けた。枢軸連合もエリシア帝国も一時退いて戦闘は休止しているぞ」
ジャンが病室に入ってきてそう教えてくれた。
「みんな大丈夫なのか!?」
「こちらの被害は軽微だ。まあ、疲労の度合いはMAXで、すぐに戦闘が再開したらやばいかもしれんがな。敵さんはこちら以上に疲弊してるだろうからしばらくは大丈夫だろうよ」
みんな無事だということで安心する。しかし、戦闘は終わってると言ってもまだまだ警戒しないといけないのは間違いない。ゆっくり休むこともできないのでは、その疲労を回復するのも難しいだろう。
「それで、お前のクラスメイトとやらは大丈夫なのか」
「治療は上手くいった。後は回復を待つだけだよ」
「そうか、それはよかったな」
「それで、話はそれだけじゃないんだろ」
「ああ、例の撤退の話だが、具体的に話を詰めようと思ってな」
ジャンがそういう言い回しで相談してくるってことは何か困ったことがあるってことだ。
「難しいのか?」
「そりゃ簡単じゃない。なんせ、大軍に四方を包囲されてるんだからな」
「なるほどな、でも、それくらいなら今の俺たちなら問題ないんじゃないか」
「そうだな、今はお前だけじゃなく、英雄や剣術指南殿がいる。確かに包囲くらいなら一点突破できるだろう。だけどな、所帯がでかくなっている分、無理をすれば被害もばかにならなくなる。できれば損害を最小限に抑えたいって考えると難しんだよ」
確かにその通りだろうな。これだけの軍を包囲から脱出させるってなると難しそうだ。
「ジャン、俺になんでも言ってくれ、今回、あまり戦えなかった分、がんばるから」
「ふんっ、言われなくてもがんばってもらう」
「それで具体的にどうするつもりなんだ」
「全軍を安全に包囲から突破させるには、お前もわかってるように、一部のメンバーにいつも以上に働いてもらわないといけない。陽動と高速移動、これが作戦の概要だ」
「陽動隊が敵軍を引き付けてる隙に、本隊が素早く移動して包囲を抜けるってことだな」
「そう、精鋭がそろってるからこそできる作戦だ。お前には陽動隊で暴れてもらう」
「任せろ、とことんやってやる!」
白雪さんの治療が上手くいってテンションがあがっていた。今の俺ならなんだってできるとすら思えていた。
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