第641話 ダイブ

ジャンとの話で、無双鉄騎団は早々に撤退する方向が決まった。ユキハの件は今はどうすることもできない。ラネルと相談して今後の対応を考えることになるだろう。


一通りジャンとの話を終えると、白雪さんのところへと戻った。まだ準備中ではあったけど、もう少しで準備ができるとのことなので、そのまま待つことにした。


「ちょっと話をしていい?」

無言で待っていると、エミナがそう話しかけてきた。


「結衣は、向こうの世界ではどんな娘だったの?」

「優等生で人気者、誰からも好かれる人格者だよ」

「そうなんだ。そういうイメージもあるけど、本当はもっと人間臭いのよあの子」


すごく興味深かった。この世界へ転移してからの白雪さんがどういう風に生きてきたのか。


「え~と、なんか俺たちクラスメイトのことなんか話してなかったか」

「そうね、話してたよ。でも安心して、彼女から悪く口なんて聞いたことないから」

「そっか……他にはなんか言ってなかったか、たとえば好きな人の話とか」


エミナは何かを察したような表情をすると笑みを浮かべてこう返事をする。


「言ってたわよ。でもその内容はちゃんと助けて自分で聞きなさい」

「そうだな、任せろ、絶対に助ける!」


そう決意したタイミングを見計らったように、フェリが準備ができたとやってきた。俺はすぐに立ち上がって、白雪さんを助ける為に動く。エミナはそんな俺を、任せたと言わんばかりに見つめていた。



マウユの時に一度経験していたので怖くはなかった。精神接続の為のカプセルに入り、心を落ち着かせる。


「勇太、前みたいに無理しないで、ちゃんとやるんですよ」

「わかってる。絶対に成功させる」

「いえ、その表情はおそらくわかってません。精神接続はあなたも危険な治療なのですからね。それを理解して行動しないと本当に危ないんですからね」

「任せろ!」


何がどう起ころうが絶対に白雪さんは助けて見せる。その決意だけは間違いないと自身があった。短く言ったその言葉にようやく納得したフェリは精神接続を開始するスイッチを押した。


スイッチを押してからすぐに視界が暗くなっていく。眠気のある気持ちのいい眠りに落ちるような感覚だけど、意識ははっきりしている不思議な感覚が続く。


それから急激な浮遊感が訪れ、高く空を飛んだ。飛行速度はどんどん上げっていき、やがて白い点が見えてきた。あれが目的地だというの経験でわかっている。その白い点は、白雪さんの心の塊だ。俺はなんだか恥ずかしい感情になりながらその白い点へと向かって飛んでいった。



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