第640話 検査結果
現実にはそれほど長い時間ではなかったかもしれない。ようやくフェリの疑似体が検査結果を告げる為にやってきた。
「フェリ! どうだった!?」
「まず、肉体的な検査結果ですが、体に支配の石が埋め込まれていました。おそらくそれで長い間自分の意思とは関係なく動かされていたのでしょう」
「支配の石!? 大丈夫なのか!!」
「それはすでに除去したので問題ありません。現代の知識では除去不能だったかもしれませんが、古代文明の技術を使えば簡単に除去できる代物です」
「よかった……」
「いえ、けして良い状況ではありません。予想より、精神汚染は進んでいました。このままでは彼女の自我は完全に破壊されるでしょう」
「そ、そんな! どうにかならないのか!」
「安心してください。治療方法はあります。勇太、貴方は一度、それを経験しているでしょ」
「あっ……マウユの時の精神接続か!」
「そうです、あの時と同じように、彼女の精神とつながり、治療プログラムを直接、深層心理まで届けるのです。幸いなことに、マウユの治療の為にこのヤマトには精神医療設備を準備しています。それを使えば治療は可能です」
それを聞いて少しだけ安心する。あまりよくない状況だけど、希望があるのは救われた。
「精神接続はまた俺がやる。すぐに接続できるのか」
「機器の調整や設定を変える必要がありますので準備が必要です。時間が少しかかりますので、その間にジャンと今後の話をしてきたらどうですか」
「確かにそうだな、わかった。今のうちにジャンと話をしてくる。エミナはどうする?」
「私は結衣のそばにいるわ」
「そうか、少しの間、白雪さんを頼む」
エリシア帝国のライダーを連れ帰った説明と、今後どうするかジャンと話をすることと、あと、渚にも連絡した方がいいかな、白雪さんとは一応は友達だし。それより白雪さんが気が付いたらどう接しようか……気楽な感じがいいよな。
不安を紛らわす為に色々考えている方が楽だった。その多数の思考はジャンのところへやってきてからも続いて指摘される。
「なにぼーとしてんだよ」
「あっ、わるい」
「それで連れ帰った敵のライダーは何者なんだ」
「この世界に一緒に転移してきたクラスメイトの一人で、エリシア帝国時代のエミナの同僚」
「なるほどな、それでどんな奴なんだ? 信用できるのか?」
「それは保証する。誰よりも誠実でよい人物だ」
「まあ、お前だけじゃなくエミナが信じてるんなら大丈夫だろ」
俺だけなら信用できなかったみたいな言い方なのが引っかかるが、今はそれを指摘している暇はない。続けて今後の話を始めた。
「それよりジャン、北の戦場なんかを見てきたけど、なんかおかしくないか? このままここに留まるのは危険な感じがするんけど」
「何がおかしいんだ」
「いや、具体的にはなんとも言えないんだけど、雰囲気というか、感覚で違和感を感じるんだ」
「なるほどな、じゃあ、危険が迫ってるのかもしれないな、そろそろ潮時か、撤退を考えてもいいかもな」
「俺の感覚だけで言ってることは信じるんだな」
「お前が具体的な理由を言うより、感覚だけで言ってくる方が信頼できるに決まってるじゃねえか」
どういう意味かはよくわからないけど、俺が頭で考えた内容より、感で浮かんだことの方が信用できるということらしい。なんとも腹が立つが、ジャンと口喧嘩して勝てる気がしないのでここは黙っておく。
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