第639話 帰艦

残念なことに、本陣に近づけば近づくほど敵の攻撃は激しくなっていた。それだけ猛攻を受けているということだけど、味方はそれをなんとか防いでいるようだ。


ヤマトに近づくと、清音の部隊もサポートに駆けつけてくれた。こちらの勢力圏内まで護衛してくれ、安全に移動する。


さらにヤマトが近づくと、ヤマトの守備隊が俺とアルテミス改を守るように壁となり敵の攻撃から完全に遮断してくれる。これにより、俺とアルテミス改はヤマトへと帰艦することができた。


ヤマトに入ると、すぐにアルレオ弐から降りて白雪さんの元へと駆けつけた。ジャンが手配していたのか、ヤマトの医療班が白雪さんを担架に乗せて医務室に向かうところだった。


「白雪さん、俺だ、勇太だ!!」


しかし、白雪さんからの反応はない。完全に意識を失っていた。そのまま医務室までついていくと、そこにはいつの間にか起動していたフェリの疑似体が待っていた。


「その方は普通の医療ポッドでは治療できません、こちらにアストラル治療機能をアップさせたものを用意しました。こちらに入れてください」


用意がいいので聞いてみると、こう答えが返ってきた。

「マウユの治療用に作成したものです。これならある程度の精神汚染なら治療可能です」

「治せるのか!」

「まずは検査してみないとなんとも言えません。焦る気持ちはわかりますけど、今は見守っていてください」


俺に何ができるわけではないのはわかっている。ぐぐっと気持ちを押させて冷静さを保とうとした。


「結衣!! 大丈夫なの!!」


どういう理由かわからないけど、遅れてエミナがやってきた。それに対して、フェリの疑似体がやれやれという表情で、俺に言ったようなことをエミナにも伝える。


心配だけど何もできない。俺とエミナは二人してとにかく検査の結果を待つ。


「勇太、あなた結衣と知り合いだったのね」

「いや、それは俺のセリフだ。エミナも白雪さんと知り合いなら言ってくれよ」

「地球人自体が珍しいわけじゃないし、そんなの考えたこともなかったわよ。それより、あなた、一度結衣と戦ってるのよ」

「ええっ!! どこで!?」

「私と出会った時の戦い覚えてる? あの時の相棒が結衣よ」

「あああああっ!! そういえばあの時、妙な感覚だったな……そう言われればあれが白雪さんだってわかるよ。俺は馬鹿なのか、どうしてあの時気が付かなかったんだよ」

「気にすることないわ、感覚でわかってもそれが思考に反映されるとは限らないものよ」


確かにあの時の俺はあれが白雪さんとは夢にも思ってなかった。さっきはエミナの結衣という言葉があったから感覚と思考を結びつけることができたのが大きいかもしれない。

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