第642話 心の中

白い光の中に入ると、めまいに似たような感覚で視界が不安定になる。そしてそれが回復した時、俺は懐かしの母校の前にいた。


しかし、どこか俺の知っている学校とは違っていた。いつもは賑やかな様子の校舎も、完全に静まり返っていた。だけど、まったく人の気配が感じられない不気味な雰囲気が漂う中、懐かしさも感じていた。ここにいる時は、戦うことなど考えることもなく、楽しく毎日を過ごしていなと考えに耽る。


だが、そんな思い出に浸っている場合ではない。とにかく今は白雪さんを探さないと……俺は迷わず校舎の中へと進んだ。


校舎に入ると、俺と白雪さんの教室へと向かった。校内でいるとすれば教室が一番可能性が高いと思ったからだ。しかし、残念なことに、そこに白雪さんの姿はなかった。他にどこにいるだろうかと考え、思いつく場所を周る。


よく体調の悪い友人に付き添って訪れていた保健室、友達の相談にのる時に訪れていた屋上、花の世話などでよくやってきていた裏庭などを見て周ったが彼女の姿はどこにもなかった。


彼女がいきそうな場所を一通り周った後は、彼女がいかなそうな場所も廻った。ボクシングの部室や、柔道場、さらに男子更衣室や男子トイレも探したが彼女はいない。


もしかして白雪さんにとっての大事な場所は、校内にはないのかもしれない。そう思った俺は外を見た。


学校の周りはほとんど黒塗りされたように見えて何もなかった。しかし、通学路、彼女の家の方向に向かって景色が伸びていた。もしかして家にいるかもしれない。そう思った俺は彼女の家へと向かう為に外へと飛び出した。


彼女の通学路を、彼女の家に向かって向かっていた時、俺の心の中にも思い出が溢れてくる。特に印象深い場所、白雪さんとの思い出の場所が鮮明に脳裏に浮かぶ。しかし、ここは現実世界ではない。白雪さんの心の中の世界で、その場所が存在してるかも疑わしいが、無意識にそこへ向かって足が動いた。



不思議なことに、僕の思い出の場所は白雪さんの心の中にも存在した。池のある小さな公園なんだけど、白雪さんとの貴重なエピソードのある場所でもある。ここで彼女と泥だらけになりながら、女の子の無くしたブローチを探したんだけど、あの頃から白雪さんが気になり始めた。


「勇太くん……」


何気なく公園を見ていると、不意に声をかけられる。声を聞いた瞬間、ドクンと心臓に衝撃が走る。すぐに誰だかわかった。俺は精神世界だとは思えないくらいに部地理的に心臓の鼓動を感じながらゆっくりと振り向いた。



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