第555話 勝負の内容

フィストアは笑みを浮かべてこう言う。先ほどのまでの控えめな紳士の態度はなくなっていた。


「そうストレートに話されては誤魔化すのが馬鹿らしくなるな、確かに我々の真の目的は英雄の復活だ。だからなんだ、お前たちにそれを止める理由があるのか?」

「英雄の本人たちも、封印をした人物もまだ早いって思ってんだよ。それを私利私欲の為に復活させるのになんの正当性もねえ!」

「私利私欲ね……我々にもそれ相応の大義があると思っているのだけどね」

「とにかく、即刻、英雄から手を引いてもらう。嫌だとは言わせねえ」

「ならどうする、実力行使にでも出る気かな」

「それもしかたないと思っているが……」


もう完全に話し合いは決裂している。一触即発の事態に緊張感が走る。


「わかった、あの無双鉄騎団とまともにやり合う気はない。どうだ、ここは勝負しないか、我々が勝ったら君たちが手を引き、君たちが勝ったら我々が手を引くと言うのはどうだ」

「ほほう、勝負の内容は?」

「魔導機による一騎打ちはどうかな、そちらには強力なライダーもいるようだし、悪い話じゃないだろ」

「面白い、その勝負ならのってやる」


ジャンは俺とアルレオ弐なら誰が相手でも勝てるとか思ってるのか簡単にその勝負にのった。確かに多少は自信があるが、世になかには上には上がいるってことがあるから油断できないぞ。


「そい言う事になったから、後は頼んだぞ、勇太」

「勝手に決めるなよな、向こうの方が強かったらどうすんだよ」

「それは無いと思うが、お前が勝てないような相手なら、どっちみち止めることはできねえよ。それなら一騎打ちってルール内で正当に止めれるんならそっちの方がいいだろうが」


確かにそうかもしれないけど……。


すぐに一騎打ちの準備が進められた。真紅の機兵の代表はフィストアで、無双鉄騎団の代表は俺である。二人の戦うことがアムリア王国の人たちに伝わり、ユキハが顔色を変えてやってくる。


「どういうことですか? なぜ真紅の機兵と無双鉄騎団が戦わないといけないんですか!? フィストアさんはただの交流だとか言っていましたが本当ですか!?」

「大丈夫、交流戦ってのは嘘じゃない。一騎打ちといっても模擬戦だからどっちかが死ぬまでやるわけじゃないし、安心してくれ」

「渚、ほんと?」

ユキハは俺の言葉が信じきれないのか、気心の知れている渚に確認する。

「本当に喧嘩するわけじゃないから安心して」


渚には全てを話しているので、この勝負の意味を知っている。このようにユキハに話をしたのは、嘘をつかないで、不安にもさせないように考慮した結果だろう。


ユキハは渚の言葉にようやく納得すると、安心したようだ。それにしても真紅の機兵によほど恩を感じてるんだな、ここまで俺たちとの関係を心配するとは……。

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