第554話 真紅と無双

やはり予想通り、アムリア王国の人たちとは別の集団がそこにいた。真紅の魔導機で統一された赤い軍団で、どうやら軍の組織のようだけど、情報通のジャンでも知らないようだった。


「もう、遺跡の中に入っているようです」

「よし、ちょっと出撃して止めてくる!」

「馬鹿、まだ出撃するな。さっきも言ったけど、仮にもアムリア王国に手を貸してる味方勢力だぞ。下手に敵対行動をするのは得策じゃねえ」

「じゃあ、どうするんだ?」

「まずは接触だ。話し合いをして、敵の思惑を探るぞ」



真紅の軍への接触の前に、当たり前だがアムリア王国の人と話をすることになった。ユキハさんが代表としてこちらに足を運んでくれた。


「無双鉄騎団のみなさま、この度は私たちを助けに、こんな辺境にまで来てくださってありがとうございます。アムリア王国を代表してお礼申し上げます」

「何よ、ユキハ、そんな他人行儀で挨拶して」

「当たり前でしょ、私はアムリア王国の代表として挨拶しにきているんだから。これは渚に言ったんじゃないわよ」

「無双鉄騎団だって知らない仲じゃないじゃない」

「こういう形式は大事なものよ、一応は私も王族なんだから」


渚とユキハのフレンドリーな会話を遮るように、ジャンが本題の質問をする。

「それよりユキハ王女、アムリア王国に同行している組織は何者かな? 見かけない連中だが……」

「あっ、あの方々は、こちらで私たちを助けてくれた真紅の機兵という傭兵団です。護衛の依頼を受けて貰っています」

「なるほどな、しかし、護衛とは別の作業をしているようだが、何をしてるんだ?」

「よくはわからないですけど、何か探し物をしているようです」

「そうか、ちょっと彼らと話をしたいんだが、仲介を頼めないか」

「いいですけど、何をお話になるんですか?」

「まあ、世間話だよ、同じ傭兵団としての交流だ」


もしかしたら話によっては一側即発になるかもしれないけど、それはユキハには伝えないようだ。ちょっと嘘をついてるみたいで少しだけ罪悪感を感じる。



その後、すぐに真紅の機兵との話の場が設けられた。一度は忙しいとのことで断られたのだけど、俺たちが無双鉄騎団だと知ると、なぜか一転して了承した。


「真紅の機兵の団長をしています、フィストアです」

「無双鉄騎団の勇太です、こっちはジャン」


「勇太さんにジャンさん、お噂はお聞きしております。二人のような優秀な人物にお会いできて光栄です」


おっ、俺たちも有名になったもんだな、そう単純に考えたのだけど、ジャンの表情は険しくなった。そしてフィストアにこう質問する。


「噂ですか……自分たちにそれほど知名度があるとは知りませんでした。失礼ですがどちらの噂で?」

「傭兵界隈では貴方たちはもはや有名人ですよ、同じ依頼を受けた傭兵団の人間から聞いております」

「ほう、俺たち無双鉄騎団の情報は意図的に封鎖されているようなんですがね、どこからそんな噂が立つのやら」

「いくら情報を抑えようとしても、事実はやがて広がるものだと思いますよ」

「なるほど、それではそろそろ、変なお世辞ではなく事実を話して貰えますかね。貴方たち真紅の機兵の本当の目的はなんですか」

「とある考古学者の依頼で遺跡の調査をしているだけです」

「事実を話して欲しいと言いましたが」

「事実ですよ、それ以外に目的はありません」

「ふむ、わかりました。それでは、その遺跡の調査を即刻、中止してくれませんか」

「それはどうしてですかな」


「我々は目覚めるにはまだ早いと思っているからです」


ジャンが直接的な言葉でそう伝える。それを聞いたフィストアの表情が不適な笑みへと変わった。

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