第553話 真紅の目的

戦闘が終わったと言っても油断はできない。急ぎ、戦闘のあった場所に向かった。その地点の位置がわかると、フェリがこう告げる。


「勇太、ジャン、聞いてください。どういう偶然かわかりませんが、戦闘のあった地点は二人の英雄の眠る地です」


「なんだと! そんな偶然あるかよ!」

「えっ!? 嘘だろ?」

俺とジャンは素直に驚いた。


「アムリア王国の連中が英雄の封印を解こうなんて考えるわけない。どうやら別の連中がいるようだな。そうなると、これまで逃走するしかできなかったのに、いきなり反撃して敵軍を撃破したのも納得する」


「ちょっと待てよ、そんなことより誰かが封印を解いてるなら、早く行って封印を解くのを止めないと」

「まあ、焦るな。思惑がどうあれ相手さんはアムリア王国の連中に味方して助けたってことだ。そうなると、なかなか強引に止めるってのも難しい話になる」


「それじゃどうするんだよ、このままだと英雄の封印が解かれちゃうぞ!」


焦る俺をなだめるように、フェリが説明してくれる。


「封印は私以外に解くことはできません。強引に解く方法もないわけではありませんが、それでも私のアストラルパターンは必要になります、ですので相手が何者かはわかりませんが、そう簡単には封印は破られないでしょう」


「そうなんだ、じゃあ、安心していいのかな」


大丈夫だろうという雰囲気を壊すように意外な人間から発言があった。

「いや、急ごう。僕の予想ではもうすぐ封印は解かれてしまう」

「どういうことだ、ラフシャル!?」


「フェリのアストラルパターンはすでにコピーされている可能性が高いってことだよ。前のメンテナンス時に不審なアクセス履歴があったからもしかしてと思っていたけど、そういうことなら話が繋がるし、間違いないと思う」


「ちょっと待ってください。その話、初耳です。どうして私にその話をしなかったのですか」

「しようとは思っていたけど、最近忙しくてその暇がなかった。まあ、データに何か仕込まれた形跡もなかったから大事じゃないだろうと思っていたし、まさかアストラルパターンがキーになってるなんて思わなかったからね」


最近のラフシャルは発明が絶好調なこともあり、夢中に作業をしているの見ていたけど、まさかそんな大事な話をしていなかったとは……フェリの疑似体は軽蔑のまなざしをラフシャルに向けていた。


「今度からはすぐに私に報告してください。本当に学問以外はだらしないんですから……」


ラフシャルのへまはもう仕方ないけど、それにしてもヤバイことになってきた。このままだと二人の英雄の封印が解かれてしまうかもしれない。俺たちは急ぎ英雄が眠る地へと急いだ。

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