第556話 半減
一騎打ちの舞台は渓谷の中にある高台で行われる。無双鉄騎団、真紅の機兵、アムリア王国の人たちがギャラリーとなり、それ相応の盛り上がりを見せていた。
すでに俺もフィストアも魔導機に乗り込み、試合開始の合図を待つ。いい緊張感の中、集中して戦いに備えようとした時フェリが異変を伝えてきた。
「おかしいですね……アルレオ弐の出力が上がりません」
「えっ! どういうこと?」
「機体に何かしらのリミッターが取り付けられているようです。申し訳ありません。コアの二次機能に接続されている為に気付くのが遅れました」
「ちょっと待って、今から一騎打ちが始まるぞ! そんなので戦えるのか!?」
「出力は通常の半分もでませんが、戦うことは可能です。相手の戦闘力次第ですが、今の勇太なら、勝率は悪くないでしょう」
「うむ……まあ、そうだな、相手がオヤジクラスの奴ならヤバそうだけど、そんな相手そんなにいなさそうだからな」
そんなフェリとのやり取りが聞こえたジャンが心配したのか通信で声をかけてくる。
「どうした勇太、何かあったのか?」
「アルレオ弐の出力が上がらないんだ」
「なんだと! 故障か!?」
「いや、どうやらいつの間にかリミッターが取り付けられていたみたい」
「なに!! ちょっと待て! アルレオ弐にそんな細工ができる奴なんて……チッ、まさかスパイか!」
「まあ、その話は後にしよう、勝負はなんとか勝つから大丈夫だ」
俺にはなんとなくだけど、このリミッターを付けた人間がわかっていた。だけど、彼女に悪意を感じたことはないし、絶対に善人だと信じている。これにも何か理由があると思っていた。
「それでは、一対一の魔導機での勝負を始めます。双方前へ!」
一騎打ちを仕切る審判は、公平をきするためにアムリア王国の人間にお願いすることになった。必然か、魔導機乗りで地位もあるユキハがその役目を引く受けて貰った。
「この勝負は殺し合いではありません、私が危険と感じたらすぐに試合を止めます。よろしいですか」
俺とフィストアはユキハの注意を聞いてお互いそれを了解する。
「それでは、勝負開始!!」
ユキハは手を上げて開始の合図と共に声を上げた。それと同時に俺とフィストアは動く。しかし、動き出しと同時に、フィストアの乗る魔導機からとてつもないプレッシャーを感じた。慌てて近づくのを止めて一歩下がる。
ちょっと待て、かなり強いぞコイツ……。
オヤジほどではないが、十分脅威を感じるほどの存在感を感じる。力が半減した今のアルレオ弐ではちと厳しい相手かもしれないぞ……。
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