第534話 遂行

通信妨害装置は巨大で破壊するにはかなりの威力の攻撃が必要になる。しかし、それをすると相手にかなりの被害を与えることになる。なんとか、通信妨害装置だけを破壊できないものかと、ラフシャルに相談したところ、内部にある動力部のコアを破壊するだけで機能を停止させることができるときいた。俺と渚はそれを目指していた。


次々と相手を半壊させながら進むのだけど、次々と魔導機が集まってきてキリがない。それは渚も感じたようでこう提案してくる。


「勇太、こっちにの相手は私がしているから、あなたは一気に飛んで装置に飛び込んで!」

「わかった! 任せた!」


そう言い残し、アルレオ弐は周りに群がっていた魔導機を振り払いながら飛び立った。


飛行するアルレオ弐を撃墜しようとアローなどで攻撃してくるが、高速飛行時に展開される謎のオーラによって全て弾き返される。便利だが乗っている本人にも仕組みはよくわかっていない。


そのまま高速飛行で飛び、ディアテナに引き付けられていることもあり楽に通信妨害装置に到着する。内部に侵入する為にパイプ部分を魔光弾で破壊すると、中に飛び込んだ。


「渚、そっちは大丈夫か」

「大丈夫だけど、早めに終わらせてくれると助かる」


渚のこの口振りからすると、かなり余裕があるようなので放置していても問題ないだろう。そう思ったが考えを改める。いや、ダメだ。確かに渚の身の安全は大丈夫だけど、その分クーデター軍の魔導機の損害が増えるのは無視できない、やっぱりなるべく早く起動コアを見つけないと。


通信妨害装置の内部構造は把握できているわけもなく、いきあたりばったりで探しまくる。その間も、追いかけてきた魔導機が襲ってくるわけで、それを相手もしなければいかなかった。


内部で、数十機ほど半壊させた頃合いに、一つ気付いたのだけど、ある一定の方角への守りが硬いような気がした。それはそちらに行ってほしくない理由があるわけで、もしかしたらこの装置にとって重要なモノがそこにあるのじゃないかと気づく。


予想通り、装置のコアらしきものを発見した。かなり巨大な球体の物体で、強弱を繰り返して光っている。これを破壊されては困るとばかりに、身を挺して守ろうとする魔導機たちの腕や足を切り落として蹴散らすと、コアへと迫る。


魔光弾を数発連射して打ち込むと、とどめは気合を込めた剣の一撃を突き刺す。コアは、バチバチと最後の断末魔をあげて、機能を停止させた。


よし、任務完了だ、そう思った瞬間、渚から異変を知らせる通信がきた。

「ちょっ、ちょっと勇太、大変!!」

「どうした!?」

「凄い大軍がこっちに向かって来てる!」


いや、今いるクーデター軍だけでも十分凄い大軍だろうに、そう思ったが実際にそれを目にすると渚が慌てたのも理解した。


「すげ~な……」


平原を進軍してくる魔導機群は数えきれない規模であった。進軍してくる足音は地響きとなり、音の嵐となってこちらに近づいてくる。


「呑気にそんなこと言ってる場合じゃないわよ、あんなの相手にしてたらスタミナが持たないって」

「そうだな、任務も達成したことだし逃げるか」


即撤退を決断した俺たちは、迫りくる大軍を背に走り出した。





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