第533話 カンニング

テミラに到着すると、偵察部隊を送り状況を確認する。それによりラフシャルが予想した図のような装置は巨大な事もありすぐに見つかった。しかし、それを守る兵力はこちらの予想を超えていた。


「偵察で確認したが、一万規模の魔導機が守りを固め居ているようだ」

「いちまん! そんなにいるのか?」

「それも全て連邦の兵だからな、むちゃな戦闘になって犠牲を増やすわけにはいかないのが厄介だ」

ラネルは規模の大きさに疑問があったのかこうジャンに聞く。

「それにしてもクーデターへ加担するにしては規模が大きくありませんか? 随分前から用意していたとしても、ちょっと組織的に機能しすぎていて不思議なのですが……」

「おそらく末端の兵のほとんどが自分がクーデターに加担しているなんて知らないと思う。その為に通信妨害をして情報封鎖しているのだろう」


「だったら、なおさら倒しまくるわけにもいかないってことだな」

「戦闘はするなと無茶は言わないが、なるべく穏便に倒して行けよ」

「穏便に倒すってなんだよ!」

「それは自分で考えろ」


言うだけなら簡単だよな……。



敵にこちらの動きを悟られない為に、主力部隊は距離をあけて待機する。そこから俺と渚が出撃して、通信妨害している装置を破壊しにいく。


「できるだけ接近するまで気付かれたくないので、徒歩でいくぞ」

「いいけど、アルレオ弐ほど私のディアテナは早く動けないんだから考えてよね」

「わかってるよ、ちゃんとスピードは合わせる」


そう言って出撃したのだけど、ついつい早く動きすぎて何度か渚に怒られた。


それから一時間ほど徒歩で移動した頃合いに、ターゲットが見えてきた。想像していた以上に警備は厳重なようで、周りは敵だらけだ。


「見えてきたぞ、あのでかいのが通信妨害している装置だ」

「どうする、守ってる数が多すぎて、これ以上進むと絶対に気付かれそうだけど」

「そうだな、どうせ見つかるし、ここからは一気に行った方がいいな」

「わかった、じゃあ、全速力で行こう」

「よし、だけど気を付けろよ、守ってる魔導機は穏便に倒すようにな」

「ジャンも言ってたけど穏便に倒すってどうするのよ」

「それは自分で考えろ」


なるほど、ジャンの真似したけどこの返しは便利だな……今度から使おう。


コソコソと見つからないように移動していたさっきまでと違って、スピード重視で通信妨害装置へと走る。当たり前のように見張りの魔導機に発見されて攻撃を受けた。


穏便に倒すという答えが渚によってはじき出される。渚は襲ってきた魔導機の腕を取り、へし折って投げ飛ばす。さらに別の魔導機には、膝に蹴りを入れて破壊して歩行不能にしてやり過ごしたりした。


やっぱり渚はこういうの得意だよな。答えがわかったので遠慮なくカンニングする。俺も魔導機の腕や足を狙って行動不能にしていく。渚ほど鮮やかにはいかないが、剣で足や腕を飛ばすくらいのことは俺にもできる。なるべく破損を少なく、襲ってくる魔導機を撃破していった。


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