第522話 希望の閃光/ラネル
接近してきた敵の魔導機に、最後の味方機が破壊された。もう、近接でエチゴを守る存在はない。すでにエチゴの砲門も残っているのは二門だけで、敵の接近を防ぐ術もない。
艦長も最後の時を覚悟したのか、私に深く頭を下げてこう言う。
「申し訳ありません。ここまでのようです。もう、貴方だけを逃がす手立てもありません。不甲斐ない護衛ですみませんでした」
不思議な事に私はこのような状況でも、なぜか焦りはなかった。艦長に微笑みながらこう答えた。
「いえ、まだ私たちは生きてます。最悪の状況ですが終わりではありません。外を見て下さい、救いの女神はすぐそこまできています」
艦長は私の言葉を真に受けたわけではないだろうが、なにげなく外を見る。そして偶然か、その瞬間、一筋の閃光が天と地を繋ぐように走った。閃光の落ちた場所にあった敵のライドキャリアを貫いた。貫かれたその艦は、膨張するように一瞬膨らむと、大きな爆発を起こして撃沈した。
大型のライドキャリアを一撃で沈めることなど普通ではありえない。それができるとすれば普通ではない強力な魔導機を操る常識外れのライダーだけ……。
彼がきてくれた── 本能がそう告げる。
彼の笑顔を思い出すと心の底が疼く。やっぱりピンチの時には必ずきてくれる私の英雄……。
大型ライドキャリアを破壊した閃光と同じものがいくつも上空から降り注ぎ、エチゴに近づいていた敵の魔導機を破壊していく。そしてエチゴの周りの敵を一掃すると、閃光を放った存在が神々しく降りてきた。
やはり降りてきたのはアルレオ弐だ。予想はしていたけど、実際に目の当たりにすると、こみあげる感情に自然と涙が溢れてきた。
「エチゴ、こちら無双鉄騎団、そちらにラネル大統領は乗っているか?」
外部出力音でそう呼びかけてくれた。すぐに艦長が返事をする。
「こちらエモウ王国軍所属エチゴ、本艦にラネル大統領を保護している。あらためて無双鉄騎団に支援を要請する」
「了解した。周囲の敵を一掃する」
簡単にそう答えるが無双鉄騎団の他の仲間の姿はない。彼はたった一機で、数百の敵を殲滅することを引き受けたのだ。
依頼を受けたアルレオ弐は左腕を敵軍に向けると、無数の光弾を発射する。敵の魔導機に破壊の嵐が吹き荒れ、光弾の命中した敵機は無残に残骸へと変えられる。
光弾を打ちまくった後、アルレオ弐は低空で飛行して敵軍に突撃する。飛行しながら剣を振り、敵魔導機の首を跳ねていく。飛行スピードと剣撃の威力に、敵は反撃することもできず、ただオロオロと逃げ惑うだけだった。
敵の半数ほど破壊されると、勝ち目がないことを悟った者がアルレオ弐から逃げ始めた。それは敵の全軍に伝達していき、やがては撤退へと変わり、敵は逃げていった。
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