第523話 久しぶりに

「フェリ、敵は全部逃げたか?」

目視では敵の姿は見えないけど、念のためにフェリに確認する。


「周囲にライドキャリア、魔導機の反応はありません。脅威となる存在はなくなりました」

「よし、それじゃ、エチゴに向かおう。ラネルと会うのも久しぶりだな」


近くで見ると、城もエチゴもボロボロで、少しでも到着が遅れたらどうなっていただろうとゾッとする。やはり、あそこで渚を置いて来たのは正解だったとあらためて思う。


エチゴに入ると、すぐにラネルの元へと案内された。彼女は感極まったような、泣きそうな顔で俺を迎えてくれる。


「勇太さん、本当にありがとうございます。貴方がきてくれなければ、私は今頃、アムリア連邦大統領と肩書が変わるところでした」


「間に合ってよかった。これで渚に怒られないで済むよ」


ラネルはフフッと微笑みこう返す。


「その渚はどうしたんですか、自惚れかもしれませんけど、私のピンチには一番に駆けつけてくれると思っていたのですが」

「一番に駆けつけようとはしてたけどね、急ぐのに邪魔だったから置いてきた」

ラネルはその話を冗談だと思ったようで、微笑みを越えて笑った。


しかし、和やかな雰囲気はいつまでも続かなかった。被害の報告をラネルは悲痛な表情で聞く。さっきの戦闘で、エチゴに乗る半数が犠牲になったようだ。さらに動力部にも損傷があり、エチゴはもう動かすことができなくなった。


「勇太殿、我々はここに残ります。ラネル大統領だけでもお連れ下さい」

艦長は、自分たちが足手まといになったと考えたようだ。しかし、ラネルがそんな提案を受け入れるわけは無かった。


「いいえ、信頼できる者にはそばにいて欲しいです。動けないならこの場を拠点として、行動を起こすだけです」

「しかし、ここはクーデター軍にばれています。敵が援軍をつれて押し寄せてくるかもしれません。安全の為にも移動した方がよいかと思います」

「こちらには無双鉄騎団がついてます。もう、敵の武力に恐れる必要はありません。それに敵に知られているということは、連邦内の友軍にも知られる可能性があるということです。きっと心ある者たちがこの場へと駆けつけてくれるはずです」


ラネルの言い分も一理ある。旗となる人物がウロウロしていては、味方となる人たちもどこに集まればいいか迷うだろ。


ラネルの説得で、エチゴの艦長は渋々それを了承した。そしてさらに働く覚悟を決めたのか、部下にライドキャリアと破壊された魔導機の復旧を命令した。コアがやられていなければ、確かに修理は可能だけど、かなりの破損具合だから難しそうだな。


ラネルとの再会後、アルレオ弐に戻り新規格の通信機を使ってヤマトに連絡を入れた。そしてラネルを保護したことと、こちらの状況を伝えた。それを聞いた渚は心底ホッとしたのか泣きそうな声で礼を言ってくる。友達思いの幼馴染を少しだけ誇りに思った。



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